かつらぎ町の頬切地蔵 日本初発見の貴重な石造物と判明


笠の下には阿弥陀如来と大日如来㊧、向こう側に釈迦如来が掘られている(写真は県教委提供)

 かつらぎ町三谷坂にある石造物、 通称「頬切(ほきれ)地蔵」が、 日本初の発見となる貴重な石造物であることが県教育委員会の調査で分かった。 自然石の上面に屋根の形の笠、正面と左右側面に磨崖(まがい)仏形式の3体の仏を造り出しており、 自然石に彫られたこのような形態の石造物は現在まで全国に類例がないという。 県教委は、 「石造物研究および高野山密教研究史上、 画期的な発見」と話している。

 「頬切地蔵」 は、 紀伊続風土記にも記載され、 地元でもよく知られている石造物。 鎌倉時代、 13世紀初頭の作で、 地表に露出した北方向に長い緑色片岩の自然石 (最大長223㌢以上、 最大幅117㌢以上、 最大高65㌢以上) に造り出している。

 石仏の高さは37~40㌢。 北面が大日如来、西面が阿弥陀(あみだ)如来、 東面が釈迦(しゃか)如来で、 蓮華座と後背が丁寧に彫られている。 「頬切地蔵」 の呼び名は、 一仏が頬を斜めに切られているように見えるためという。

 三谷坂はかつらぎ町三谷から高野山へ上る参詣道で、「天野道」「勅使道」とも呼ばれる。県教委は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の拡大登録を目指して、 昨年度から県内各地で調査。三谷坂は有田市糸我峠や日高町鹿ケ瀬峠などと共にことし3月に県の史跡に指定された。 さらに国史跡指定を目指して調査を進めており、 三谷坂石造物の調査はその一環だった。

 県文化遺産課世界遺産班の木村嘉夫主査は、 「三谷坂は信仰の道として知られていました。 頬切地蔵はまさしく信仰を裏付けする根拠の一つになります」 と話している。

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