財政規律損なう補正予算 将来にツケ回さない対策を

岸本 周平

 通常国会が開かれています。 私は衆議院予算委員会の委員に抜擢され、 本会議での代表質問や、 委員会での質問、 討論などをさせていただいています。 テレビの中継で見ていただいた方も多いと思います。

 先週、 今年度の補正予算案は衆議院で可決されました。 民主党は野党として協力すべきは協力するという姿勢でのぞんだ国会ですが、 この予算案には賛成できませんでした。 一定規模の補正予算は必要であると考えていましたが、 審議の過程で、 その内容があまりにも財政規律を損なうものであることがわかってきました。 従って、 残念ながら、 予算の組み替え動議を出しました。

 この補正予算は旧来型の公共事業の大盤振る舞いであり、 その財源を確保するために5兆円を超える国債の追加発行を予定しています。 かつての政府は、 バブル崩壊以降、 200兆円を超える公共事業を行ってきましたが、 結果として経済再生にはつながらず、 将来の子どもたちに借金の山を残すこととなりました。

 政権に復帰した自民党によって、 同じ失敗が繰り返されるという大きな懸念があります。 まず、 参議院で可決されるのが今月末ですから、 残り1カ月。 これでは、 補正予算に計上されている公共事業を年度内に執行することは極めて困難です。 繰り越しを前提にした補正予算はルール違反です。 また、 補正予算は年度途中で 「特に緊要となった経費」 でなければ編成できません。 これは財政法で決められています。 今回の内容を見ると、 本来、 当初予算で行うべきものばかりで、 緊急性はありません。

 また、 今でも復興需要などから人件費、 資材費が高騰する中、 補正予算の過大な公共事業により、 被災地の復興が遅れるおそれがあります。 実際、 被災地に進出した業者も、 補正の事業を目当てに地元に戻り始めています。 さらに、 防災や復興以外の、 将来の経済成長につながるとの理由で実施する公共事業も政府として、 費用対効果分析などの経済効果が示せませんでした。

 同時に、 補正予算で多額の国債を発行することで、 見せかけ上、 来年度当初予算の国債発行額を抑制することは、 財政の透明性の観点から大問題です。 麻生財務大臣は、 来年度予算において借金収入が税収を上回る異常な状態を解消できたと胸を張りますが、 その実態は、 15か月予算として今年度補正予算と合わせると税収を大幅に上回る国債を発行することになっています。

 私が財政演説に対する代表質問で指摘したように、 シーリングのかからない補正予算はどうしても財政規律が甘くなりがちです。 その結果、 わが国は昨年末で997兆円、 国民一人当たり約782万円の借金を抱え込むことになっています。 景気対策は金融緩和と成長戦略で行い、 これ以上孫や子どもにツケを回さないようにしようではありませんか。

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