「和歌祭」大正期の苦難 和大紀州研で企画展


貴重な資料が展示されている

 和歌山大学紀州経済史文化史研究所の企画展 「和歌祭―大正九年藩祖入国三百年祭―」 が、 和歌山市栄谷の同所で開かれている。 紀州東照宮 (同市和歌浦西) の祭礼 「和歌祭」 について、 観客が増える一方、 運営面で苦難を強いられた大正時代の姿を、貴重な写真や資料を通して紹介している。

 同研究所が平成22年から毎年開催している和歌祭に関する企画展の第4弾。

 和歌祭は、 廃藩置県で紀州藩が消滅すると明治4年 (1871) を最後に一度途絶え、 2年後、 祭礼を担ってきた有志によって民衆の祭礼として復興された。 その後、 旧藩士や海軍関係者らによる団体が寄付金を集めて開催したが、 思うように資金が集まらなくなり解散。 明治40年 (1907) 以降は和歌浦東照宮保存会が開催の主体となったが、 これも大正6年 (1917) に解散となった。

 明治31年、 宇田川文海の 『南海鉄道案内』 に和歌祭が 「天下三大祭の一つ」 と掲載されて以降、 観客は増えていたが、 大正年間は開催基盤が整わず、 資金面に大きな困難を抱えており、 開催は5回にとどまっている。

 また、 日清・日露戦争のころから、 祭礼に武士、 武道といった戦いの意味づけがなされるようになり、 大正時代は、 江戸期の風流で華やかな祭礼のイメージが変化していった時期でもあった。

 今回の企画展は、 12万人が訪れたといわれる節目の祭礼、 大正9年 (1920) の紀州藩祖・徳川頼宣入国300年記念祭を写したアルバム 『WAKAMATURINOKI』 や、 同4年に復興された 「御関船」 の写真、 旗など貴重な資料を展示している。

 大正とほぼ同様の祭礼が行われていた昭和10年の和歌祭の映像も上映し、 現在は行われていない芸能 「甲兵」 などを見ることができる。

 同研究所の吉村旭輝特任准教授は 「大正期は観客が増え、 資金難でも開催しなければならないというジレンマを抱えていた。 祭礼を継承していく難しさを垣間見ることができる」 と話している。

 5月17日まで (土・日曜と祝日は閉館)。 開場は午前10時半~午後4時。

 問い合わせは同研究所 (℡073・457・7891) へ。

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