特定秘密保護法の課題と提案 「ツワネ原則」にのっとる法に

岸本 周平

 外交安全保障の秘密の保護と国民の知る権利のバランスを取ることはとても大切なことです。私は、そのための法律は必要だと思います。残念ながら、安倍内閣は、前の臨時国会で特定秘密保護法案を強行採決しました。もう少し時間をかければ、与野党で合意に達することはできたのに、もったいないことをしました。どうして、そんなに急がなければならなかったのでしょうか?
 私たちの提案は次の通りです。

 ①第三者機関で恣意的な情報隠しを阻止します。
 政府から独立した「情報適正管理委員会」を設置します。行政機関が恣意的に行動できないよう、秘密の指定基準を同委員会が作成するなど、第三者機関によるチェックを可能にします。第三者機関は政府から独立させないと意味がありません。

 ②情報提供のイニシアティブは国会が握ります。
 衆参両院の議長が「秘密会」などを開いて、行政機関の長に情報提供を命じ、調査や勧告ができるようにします。今の法律では、国会に情報を提供するかどうかは、行政機関の裁量に委ねられています。アメリカでも議会の特別委員会の監視が前提です。

 ③意図的な情報廃棄や永久的な非公開を阻止します。
 情報をいたずらに廃棄せず適切に保存させるとともに、30年以内に原則公開とします。今の法律では7項目も例外規定があり、60年を超えても内閣が認めれば永遠に秘密になり、情報公開の趣旨に反します。米国では、予め定めた期間が過ぎれば、自動的に機密情報も公開されます。日本では、期間が過ぎた場合、行政が勝手に廃棄することも可能になっています。これでは、未来永劫秘密のままになり、歴史の審判を仰げません。

 ④外交や国際テロ情報の適正管理と「国民の知る権利」尊重を両立させます。
 外交と国際テロに関する必要最小限の情報を「特別安全保障秘密」と指定し、適正に保護します。この分野での外国との情報共有が大切なことだからです。一方で、国民の知る権利、報道、取材の自由を最大限尊重します。今のままでは、「特定秘密」の範囲はあいまいですし、その基準も行政が恣意的に決められます。また、情報公開の視点が抜け落ち、「著しく不当な方法」という恣意的な基準で取材の自由が制限されます。

 以上の考え方は、今年の6月に策定された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」いわゆる「ツワネ原則」にのっとっています。これは、国連、米州機構、欧州安全保障協力機構、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会を中心に、世界70カ国以上から500人を超える専門家が集まり、外交安全保障の秘密保護と国民の知る権利のバランスを取るルールを定めたものです。このままでは、「ツワネ原則」に反し、国際的にも孤立してしまいます。

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