アベノミクスとは何だったのか 今後の経済動向のリスク

岸本 周平

 今年の経済はどうなっていくのでしょうか? 昨年はアベノミクスの掛け声で景気が上向きました。一方では、今年4月の消費税率引き上げの影響も考えなければなりません。ここで、アベノミクスを評価して、今後の経済動向を考えてみたいと思います。

 まず、リーマンショック後の行き過ぎた日本経済への悲観論に対する「ショック療法」としては、成功したことを認めるべきです。過度な円高の修正と、安過ぎた株式市場の修正には成功しました。ただし、株価については、16兆円の外人投資家の買い越しと、日本の機関投資家6兆円、個人投資家9兆円の売り越しによってできた高値なので、どう評価するかは難しいです。なぜなら、結局日本人は誰も日本の未来の指標である日本株を買っていなかったからです。今年の1月に外人が1・3兆円売り越したら株価は下がりました。今後も、いつ外人が売り越すか不安定な相場です。

 また、円安になれば輸出が増えるから、日本の景気は回復するという「物語」が期待されましたが、これまで輸出は増えるどころか数量ベースではマイナスが続いています。2000年代半ばの超円安時、家電メーカーは国内に生産拠点を回帰させ巨額の設備投資をしました。その後、円安が修正された後、商品の競争力不足もあって、家電メーカーはたいへんな目にあいました。この時の経営判断の失敗に学び、どの企業も工場の国内回帰などしていないためです。

 第2に、アベノミクスはポピュリズムの政策だと言えます。第1の矢は「コスト先送りの金融政策」であり、第2の矢は「需要先食いの財政政策」でした。これならば、目先は誰も困りませんから人気は出ます。その「時間稼ぎの間に、第3の矢の成長戦略をします」とは言うものの、これまで規制改革も不十分で、その効果は不透明です。

 第3は、「日本を取り戻す」というスローガンの通り、これまでの古い投資主体や輸出中心の製造業、さらには賃金アップの恩恵を受けられる大企業の正社員といった、既得権益への利益誘導だという点です。「既得権を取り戻す」のですから、新しいイノベーションを起こして、日本の産業構造を変えるのではなく、これまでの経済主体の寿命を10年伸ばすだけに終わります。確かに、短期的な政策としては効率の良いやり方かもしれませんし、選挙対策上も賢明なやり方でしょうが、まじめに生産性を上げてイノベーションを起こそうという意欲が無くなります。過去の公共事業による景気対策が、地方の産業活性化をはばんできたことの繰り返しです。

 今年の経済動向は、バラマキ政策による財政赤字のリスクと、円安にもかかわらず輸出が増えず、輸入が増えて貿易赤字が増え続けるリスク、「アベノリスク」に気を付けなければならない状態だと思います。

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