アベノミクスの問題点 貧困と格差の拡大へ

岸本 周平

 アベノミクスの問題点を考えてみたいと思います。アベノミクスは、そもそも日銀や政府の役人が経済を意のままに操れるはずだという、いわば「国家社会主義」的なアプローチです。しかも、株式市場に頼る強欲な資本主義に基づいています。

 今は、資本主義のメッカであるハーバードビジネススクールでも変化が起きています。マイケル・ポーター教授が「共通価値の創造(CSV:Creating Shared Value)」を提唱しています。ポーター教授は、これまで強欲資本主義の本家として、新たな企業の参入をはばみ、利潤を拡大する理論を教えていました。その彼が、リーマンショックを受けて「資本主義の危機だ!」と反省。企業は利潤の追求だけでなく、本業で社会に貢献し、社会の役に立つことも目標にすべきだと提案したのです。彼は、企業にとっての価値とは、経済的利益と社会的利益の両方(共通価値)であり、それを企業と地域社会が共同でつくらなければならないと言います。

 本業で社会の役に立ち、利益も出していくという考え方は、日本には昔からありました。江戸時代の近江商人の「売り手に良し、買い手に良し、世間に良し」という「三方良し」の家訓です。明治の大資本家渋澤栄一翁の「論語と算盤」にも同じ発想がうかがえます。このように本来、日本の企業家に親しみのある「共通価値を実現する資本主義」はアベノミクスとはまったく逆の考え方です。

 そして、今、アベノミクスのせいで、物価が着実に上がり始めました。4月は消費税の引き上げもあり、円安による輸入物価の上昇などと合わせて、消費者物価は3%上がっています。日銀の見方はおそらく来年、再来年には2%の物価上昇が実現できるということでしょう。来年の秋にさらに消費税が2%上がると、複利計算すれば3年間で9・2%も物価が上がることになります。

 さて、今、3%の収入アップの方はどれだけおられますか? 3年間で9%の賃金アップを見込める方は? 株を売ってもうけることのできる人は限られています。結局、普通の人の生活は苦しくなって、貧富の格差が広がることになってしまいます。

 何より、世界の歴史の中で、政府がお札をじゃんじゃん印刷して、幸福になった国は一つもありません。今は、皆さん浮かれていますが、まじめに考えれば、アベノミクスは国民に幸福を運んでこないことがわかります。

関連記事

同じカテゴリのニュース一覧

がんばってます

月別アーカイブ