紀州材活用作品で受賞 建築家の広谷さん

森の茶室
森の茶室

 和歌山市出身の建築家・広谷純弘(よしひろ)さん(57)が設計に携わった2つの作品が、第17回木材活用コンクール(日本木材青壮年団体連合会主催)の「木製品部門賞」と、第9回こども環境学会賞(同学会主催)の「デザイン賞」の2つの賞を受賞した。紀州材を活用した優れた設計への評価により、同材の利用拡大にも期待が高まる。

広谷さん

広谷さん

 同コンクールで受賞したのは、広谷さんと東京理科大学ブロックシステム研究会が紀州材のスギを使って設計した「森の茶室」。同コンクールは、木材の良さを生かし、新しい用途の普及と利用拡大に貢献する優秀な作品を表彰するもの。「構造物」「木質空間」「一般住宅」「ランドスケープ・インスタレーション」「木製品」の5部門があり、111の応募作品の中から20作品が受賞した。

 「森の茶室」は2年前、紀州材の良さを身近に感じてもらおうと、美しい木肌と、狂いの少ない材質を生かして広谷さんと学生が設計。和歌山木材協同組合が県の紀の国森づくり基金活用事業の一環として製作した。2種類の大きさのブロックを斜めに積み上げた壁には、5㌢角の隙間が数百個あり、森の木漏れ日をイメージしている。

 学生が手掛けた作品であることや、機能性にも優れ、木の美しさや温もりの伝わる作品であることが評価された。

 同学会賞のデザイン賞は、広谷さんが代表を務める建築事務所、アーキヴィジョン広谷スタジオが設計した「レイモンド庄中保育園」(愛知県)がことし4月に受賞した。子どもの環境改善に役立つ研究・デザイン・活動業績などを「論文」「デザイン」「活動」の3部門で表彰し、20作品の応募から7作品が選ばれた。

 同園は、紀の川市に本部を置く社会福祉法人檸檬会が運営しており、園児用の家具は紀州材のヒノキを用いて武蔵野美術大学教授の小泉誠さんがデザイン。県の紀州材プロモーション事業の補助金を活用し開発した。

 審査では、園舎内部の新しい建築的、デザイン的な完成度や、アート・デザインによる保育の試みが極めて優れていると評価された。

 今回、ダブルでの受賞を受け、広谷さんは「私にとっての建築は、自然や環境、アートやデザイン、社会や経済など、他の事柄と結びついてその価値を高めるものだと思っている。今回の受賞はそのあたりを評価していただけたと、とてもうれしく感じている。これからも、建築を単にデザインとして捉えるのではなく、より広い価値観との関係の中で進化していくように、活動していきたい」と話している。

 広谷さんは、本紙に「建築家広谷純弘とこだわり仕事人」(毎月第2木曜付2面)を連載中。

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