駿河屋問題シンポ 200人が聞き入る

想定の60人を大幅に超える市民らが詰め掛けた
想定の60人を大幅に超える市民らが詰め掛けた

 先月29日に操業停止し、550年以上の歴史に幕を下ろした和歌山市の和菓子メーカー「駿河屋」について考えるシンポジウムが22日、和歌山ビッグ愛で開かれ、主催者が想定した3倍以上の約200人が詰め掛け、問題への関心の高さを示した。まちづくり団体など市民有志らでつくる「和菓子と文化と和歌山 大好き市民連」が主催した。

 「駿河屋が本当になくなっていいのか」。前和歌山大経済学部教授の鈴木裕範さんが呼び掛け人となり、ふるさとの歴史、文化について市民に問い掛けたいと企画。新聞各紙などで大きく事前告知されたこともあり、会場はあふれるほどの人でごった返した。

 鈴木さんが和菓子や駿河屋の歴史について解説した後、「老舗ブランドって何?~駿河屋問題をみんなで考えよう~」と題してパネルディスカッション。元同学部教授の岩田誠さんをコーディネーターに、表千家同門会県支部参与の森本光子さん、茶舗諏訪園店主の永原敏行さん、和歌山社会経済研究所常務理事の木下雅夫さん、和歌山放送アナウンサーの中川智美さんの4人がそれぞれの立場から、茶道と和菓子の関係や、各地方の老舗の経営事例を紹介するなどした。

 駿河屋再生に向けた具体的な話にまでは踏み込まず、会場からは「新会社を作ってブランドや製法を引き継ぐとか、投資家として金を出す人がいるかなど、その視点が非常に欠けている」というややいらだちを含んだ声が上がり、参加者と主催者側に温度差が生じる場面もあった。

 最後に「駿河屋が今後も和歌山で存続し、再生することを希望します」などの宣言を採択した。宣言は県や市に届ける予定。参加した築港の細畠美鶴さんは「これだけ大勢が集まってびっくり。駿河屋さんの歴史は確認できた。破綻の問題があるので、難しい話はこの時間内じゃ話し切れないと思う」と話した。

 市民連は今後、共に活動する有志を募り、駿河屋再生に向けた取り組みを進める。
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 鈴木さん 駿河屋問題に関心のある市民がこれだけ多いことがあらためて分かった。人が集まりやすいテーマをと設定したが、参加者の中には生ぬるく、不満が残った人もいたかもしれない。会場から「もっと早く開催すべきだった」という声があったが、僕自身そう思う。「声を上げる市民はいるだろう」と思っていたが、きょうまでいなかった。550年の歴史が僕たちの時代に消えていくという意味は、そんなに小さいのか。文化、伝統を尊敬する気持ちを本当に持っているのか。僕たちは地域の文化をもっと耕し、掘り起こさないといけない。そういうことを駿河屋問題は問うているのではないか。

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