旧南方家など国有形文化財に登録へ

 国の文化審議会は、新たに全国133件の建造物を登録有形文化財とするよう、文部科学大臣に答申した。県内では、世界的な民俗・博物学者の南方熊楠が暮らし、研究の場にもなった旧南方家住宅など4カ所11件の建造物が対象で、登録されると、県内の登録有形文化財(建造物)は73カ所197件となる。

 答申されたのは、坂部家住宅(和歌山市府中)の離座敷・乾蔵・門長屋、伊藤家住宅(御坊市御坊)の主屋と離れ、佐竹家住宅(同)の主屋と離れ、旧南方家住宅(田辺市中屋敷町)の主屋・書斎・土蔵・井戸屋形。

 坂部家住宅は、もと地主の屋敷で、平成18年に主屋が登録有形文化財となり、今回同じ敷地内の3棟が追加登録となる。一体として、落ち着いた農村部の歴史的景観を形成している点で価値が高いとされた。

 離座敷は昭和初期の建築とされ、地袋のある6畳と床のある4畳半を南北に並べ、小規模ながら全体として丁寧な仕事で保存状態も良好。

 乾蔵は敷地の北西隅に位置し、土蔵造2階建て。外壁は白しっくいで腰板が張られ歴史的景観にも寄与している。

 門長屋は、敷地の西側南寄りに西面する長屋門形式の建物。しっくい壁に腰板を張る外観は伝統的な形式をよく残し、旧家の正門として景観上も重要な役割を果たしている。

 追加指定を受け、所有者の坂部功さん(77)は「維持管理は大変ですが、歴史あるものを後世に引き継いでいかなければという思いを強くします」と話した。

 御坊市の2住宅は、ともに山林業者の住宅として建てられ、山林業の繁栄を物語る建物。それぞれ、大正期の町屋の意匠(伊藤家)、明治中期の町屋形式(佐竹家)を伝え、御坊の街並みをかたちづくり、時代の特徴をよく表している点で貴重とされた。

 旧南方家住宅は、熊楠が大正5年以降、74歳で亡くなるまで25年間生活した建物。主屋は明治後期の建築とされ、木造2階建て一部平屋で、寄せ棟造り瓦葺き。外壁は開口部以外の大部分が焼杉板張りで、この張り方や玄関戸が斜板張りの両開き戸であるなど、同地方の伝統的な民家と違い、洋風の意匠が加味された住宅の例として価値が高いとされた。

 

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