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和歌山さんぽみちプロジェクト

伊勢路旅④三重県南牟婁郡御浜町②

前号から御浜町を取り上げている。同町の沿岸部にある七里御浜(しちりみはま)は、熊野古道伊勢路の「浜街道」として親しまれてきた。浜街道が続く東紀州(尾鷲市以南)では、熊野灘で獲れるサンマを使った郷土料理「さんま寿司」が有名。今週はさんま寿司の魅力を紹介したい。
さんま寿司の発祥は、熊野灘に面した東紀州と言われる。親潮に乗って南下するサンマは、北海道や三陸で取れるものと比べやや小ぶり。脂分は適度な量となっており、丸干しやすしへの加工に適している。また、ミカンやユズなどのかんきつ類が豊富なため、それらを使いサンマの臭みを消すことができ、薬味としても適している。

東紀州ではさんま寿司がハレの料理として親しまれてきた。頭と尾が付いたままのサンマにはめでたさがあるとされ、正月料理に欠かせないという。

地域性が現れるのが、サンマの開き方。熊野市以南(紀南)のこの地域では背開きで、尾鷲市以北(紀北)では腹開き。代官所があった熊野市では腹開きは切腹を連想させるとされ、腹開きや頭を落とすことは避けられてきたという。サンマの背は黒く、その部分が寿司の両端にあれば背開き、寿司の中央にあれば腹開き、といった具合だ。

薬味も異なり、紀南はかんきつ酢をベース、紀北はカラシが用いられるなど、見た目は似ていても、よくよく比べると大きな違いがあるのも魅力の一つ。

御浜町はじめ、さんま寿司を食べられるお店は多数。サンマの漬け具合や酸味も店によってさまざま。道の駅などにある産直市場では家庭料理に近いものが販売されており、これもお薦め。

代々受け継がれてきた郷土料理の味にふれられるさんま寿司をぜひご賞味あれ。

東紀州(紀南)の「さんま寿司」

東紀州(紀南)の「さんま寿司」

(次田尚弘/御浜町)