マイナス金利で暮らしは不安に! ―ふつうの人から豊かになろう

岸本 周平

 日銀がマイナス金利を導入しました。金利がマイナス? それで、私たちの生活はどうなるの? マイナス金利はお金の値打ちを下げますから、日銀のねらいは円安で、株高です。
 しかし、中国経済の不振や原油安による世界経済不況などの問題がある以上、効果は出ません。しかも、今の金融市場では、新興国やシェールオイルの会社などのハイ・イールド債(ジャンク債のこと:ハイリスク・ハイリターンの金融商品)が焦げ付くリスクが大きくて投資家も疑心暗鬼。ですから、逆に円高が進み先週も110円台に突入。株価は一時1万5千円台になり、その後、乱高下。先週末は1万6千円台です。短期的な円安、株高効果は期待外れに終わりました。
 10年国債の金利もマイナスになり、住宅ローンなど貸出金利は下がりました。しかし、私たちの預金金利はマイナスにはできませんから、銀行にとっては大幅な減収要因です。特に、地方銀行などの経営には大打撃。その結果、金融株は大きく値を下げました。これでは、地方の銀行はお金を貸してくれなくなり、地方創生には逆行します。
 そもそも、若い世代が多ければ、金利低下は消費や住宅購入を促します。しかし、日本のような高齢社会では、借金する人が少ないため、金利引き下げのプラス効果はありません。むしろ、マイナス金利でお金の値打ちが減っていくイメージが、人々を不安にさせました。実際にお金をためる人が増えています。
 10年国債は一番安全な資産です。この金利は将来のインフレ期待と連動します。マイナス金利のヨーロッパでも10年国債はプラスです。安全な資産がマイナス金利では年金をはじめ生保や損保の会社は運用ができません。そして、市場が将来の物価をマイナスだと予想しているため、長期的にはますます不景気になります。
 金融政策だけで経済成長はうながせません。日本の潜在成長率は2014年の0.5%から2015年は0.4%と下がってきています。昨年10―12月期の実質成長はマイナス1.1%。過去3年間の実質成長率も年率0.6%で、民主党政権時の年率1.6%に大きく負けています。残念なことですが、アベノミクスは失敗しました。
 経済成長を目的にする時代は終わりです。少し遠回りかもしれませんが、医療や教育、職業訓練に財源を集中して一人一人の生産性を高める政策を行い、結果として経済が成長し、ふつうの人から豊かになる社会をつくっていくべきだと思います。

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