TPP交渉の真実 黒塗りの裏は白旗だった

岸本 周平

TPP特別委員会のメンバーとして国会審議に参加してきました。私は、自由貿易や投資のルールの透明化などTPPの考え方には賛成です。しかし、今回のTPPの内容には納得できません。

そもそも、安倍内閣は情報公開の要求にまったく応じようとしません。外交交渉のすべてを公開できないことは当然ですが、日本側の主張など相手の許可の要らない部分だけでも公開すべきです。しかし、出てきた資料は45ページすべての項目が真っ黒に塗りつぶされた「ノリ弁当」。その一方で、西川公也前農水大臣は、交渉の内幕を暴露した著書を出版しようとしました。その原稿を読むと、交渉過程が明らかになっています。「政府が国会に情報を出せないというなら、西川前大臣は守秘義務に違反している。あるいは、西川前大臣の原稿程度の内容は守秘義務違反でなく、本来政府が情報公開すべきものである」。どちらかのはずです。このような論理的な問いかけにも政府は答えません。

また、国会決議では農産物の重要5項目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖)の関税は、「除外または再協議」の対象とされ、安倍内閣はこの決議を守ると約束しました。そこで、今回の交渉の結果、どれだけの項目が無傷で残されたのかを聞きました。その答えは「無傷で守れた品目はゼロ」でした。一方、攻めるべき自動車分野では、米国に完敗です。米韓FTAの韓国と比べると、乗用車では関税2・5%を5年目に撤廃。日本は5年目から削減開始で、25年目で撤廃。トラックでは、韓国は関税25%を10年目に撤廃。日本は29年間維持し、30年目で撤廃。日本の方が韓国よりも2、3倍時間がかかります。なるほど、守るべきものが守られず、攻めるべきものを攻めてなかったのですから、真っ黒に塗られた資料しか出せないはずです。黒塗りの裏は白旗だったわけです。

安倍内閣は、TPP承認案の成立をあきらめ、継続審議にしました。政府は、情報公開を一切拒否しています。よほど都合の悪い情報があるのではと予想していましたが、案の定でした。これ以上審議を続ければ、譲り過ぎた交渉の実態が明らかになるため、参院選への影響を恐れ、継続審議にしたのが本音です。しかし、秋の臨時国会に議論を先送りしても、また同じような問題が出るだけです。TPPは、農業分野に限らず広く国民生活に影響を与えます。だからこそ、政府は適切な情報開示と正直な説明を行うべきです。

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