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和歌山さんぽみちプロジェクト

伊勢路旅(40)三重県伊勢市④

前号では20年ごとに伊勢神宮で行われる式年遷宮(しきねんせんぐう)の際、新たな御正殿の敷地内に地域住民が一体となり白い石を奉納する「お白石持(しらいしもち)行事)」を取り上げた。

伊勢神宮の門前町であるこの地域に、住民が一体となって地域の価値を高めた優良な事例がある。今や伊勢を代表する観光地の一つとなった「おかげ横丁」の歴史と地域の方々の奮闘を紹介したい。

おかげ横丁は伊勢神宮・内宮の門前町に位置する土産品店などが建ち並ぶ地域。熊野古道・伊勢路が通る伊勢参宮街道に位置し江戸時代には年間400万人ほどの参拝客でにぎわったが、交通機関の発達により横丁を訪れる客が減り、昭和60年代には20万人まで落ち込んだという。

この状況を打開しようと立ち上がったのが「赤福」の名で知られる和菓子店。平成5年7月、140億円を投じ約2700坪の敷地に伊勢の伝統的な建築技術を用いた店舗や、洋館などを再現した27棟の建物と42の店舗を整備し、かつての街道のにぎわいを再現。また、行政によるまちなみ保全事業として保全整備基準が条例化され、エリア内で新増改築を行う事業者への低利子融資や電柱の地中化、道路の石畳化が進められた。

結果、オープン初年の平成5年に60万人超、翌年には約200万人、現在は約400万人もの観光客が訪れ、かつてのにぎわいを取り戻している。

ちなみに「おかげ横丁」の名は、この地で300年も商いを続けていることへの感謝の思いと、江戸時代のお伊勢参りの意である「おかげ参り」に由来するという。その思いが通じ訪れる客の8割以上がリピーターであるという統計もある。地域の方々が民間主導でまちの再興を図り、門前町としての価値をかつて以上に高めた事例。訪れて伊勢の魅力を感じてほしい。

(次田尚弘/伊勢市)