誤解は国民国家の損失に 法案のレッテル張りに注意

石田 真敏

今年は、変化が大きくかつ極めて重要な年になると考えます。表面的には、トランプ米大統領の政治によって高波になったり凪いだりと、さまざまな状況が起こると考えられ、適宜適切に対処していくことが求められます。一方、底流では「第4次産業革命」とそれらがもたらす「SOCIETY5・0」に向けた確実な動きが加速化します。表面の変化に対応していくとともに、少し長い目で見て奥底に流れる確実な動きにもしっかり対応していくことが、将来のために極めて重要になると考えます。

さて、安倍内閣は年末の世論調査を見るとおおむね、外交面では対ロシア交渉でも真珠湾訪問でも高い支持率を得ている一方、カジノ解禁や年金改革については反対が多数です。真摯に受け止め、大いに今後の参考にしていかなければなりません。

ただ最近の傾向として、法案に対する野党のレッテル張りや報道の仕方により、中身が十分に理解されないまま批判されることがしばしばあります。このことは、非常に重要な意味をはらんでいます。誤解されたまま重要なことが前に進んだり停滞することは、国民国家にとって重大な事態を引き起こしたり、大きな損失を招きかねません。

一昨年の野党が言う「戦争法案」にしても、日本の周辺情勢の変化に伴い、憲法を改正しなくてもよい範囲で安全保障の法律を整備して抑止力を高めるものであり、敢えて言えば「戦争を起こさないための法案」でした。そして今回のカジノと年金改革も同じようなレッテル張りで、国民の理解が深まるような審議が行われなかったように思います。

まず「カジノ法案」は、正式には「特定複合観光施設区域の整備の促進に関する法律案」です。つまり、ホテルなどを中心にした「統合型リゾート施設」を進めるもので、カジノはその一画で厳格な適正審査により許可された事業者だけが運営できます。さらにこの区域は、地方自治体が申請して国が認める数カ所に限られます。そして観光客やビジネス客が夜、食事や観劇を楽しむのと同様にカジノを楽しむことが考えられています。

今回の法律は、1年かけて具体的な実施法案を作って国会に提出することを、政府に求めた基本的な法律であり、時間をかけて、中身を具体的に審議する法律ではありません。カジノへの入場規制や事業者の適格性、さらに依存症対策などの本格的な審議は、政府が国会に提出する具体的な法案を元に行われます。

次に「年金カット法案」です。正式には「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」と言います。万が一、不測の経済状況となり、物価より賃金の低下が大きい場合には、若い世代が将来受け取る年金を確保するため、賃金の低下にあわせて年金額を改定するものです。また、導入は5年後の平成33年であり、賃金と物価が安定して上がっている現在のような状況では年金はカットされません。万が一のときに、高齢者にも少し我慢いただき世代間で支え合おうというものです。

これらの法案はレッテル張りにより、随分中身と異なるイメージが膨らんでしまいました。国民に大きな誤解を生んでしまうだけに、過度の誇張や単純化には十分注意してもらいたいものです。

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