慢性腎臓病の新治療に道 医大が研究成果

慢性腎臓病の初期から血中濃度が上昇することが分かってきたホルモン「線維芽細胞増殖因子23」(FGF23)の作用について、県立医科大学の坂口和成教授は1日、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制するというこれまでの優勢な意見とは反対に、分泌を促進する実験結果が得られたと発表した。新たな治療法の開発につながる発見だとしている。

坂口教授によると、慢性腎臓病では、血中のリン濃度の上昇、カルシウム濃度の低下、活性型ビタミンD濃度の低下などにより副甲状腺でのホルモン分泌が高まる二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)をきたし、主に骨や心血管系に障害をもたらす骨ミネラル代謝異常が引き起こされることが知られている。

FGF23は骨で作られるホルモンで、体内でのリンの蓄積やビタミンDの活性化を阻害することが分かっているが、副甲状腺に対する直接作用については議論があり、これまでは2007年にイスラエルの研究者が発表した「副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する」という見解が優勢とされてきた。

坂口教授を中心とする同大の研究グループは、約4年前から慢性腎臓病のモデルマウスを正常なマウスと比較する実験などを繰り返し、通説と正反対の「副甲状腺ホルモンの分泌を促進する」という結論を得た。

この研究成果は、1月17日付の英国のオンライン科学雑誌「サイエンティフィック・レポート」に掲載された。

今回の研究成果により、慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常の治療法として、FGF23の分泌を抑える薬などが新たな選択肢となり、開発につながる可能性が開けた。坂口教授は「これまでは点滴や注射が主な治療法だったが、飲み薬の開発も期待できるのではないか」と述べ、研究成果の活用に期待を示した。

研究成果を発表する坂口教授

研究成果を発表する坂口教授

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