役人の天下りはなぜ悪いのか 自力で民間に挑戦すべき

岸本 周平

文部科学省の役人の天下りが問題になっています。なぜ、天下りはいけないことなのでしょうか。ただ、役所に長く勤めていただけで、能力もないのに高い給料で民間企業や団体に天下るのはけしからん、ということもあります。

何より、天下り先が役所の監督先や、補助金をもらう立場であったら、不正なことが起きかねません。役人が、OBを天下らせるために役所全体として、補助金の審査を甘くしたり、監督のホコ先をゆるめるようなことがあっては行政がゆがみます。だから、天下りは許されないのです。

昔は、2年間、役所が監督している業界への天下りは禁止されていました。その代わりに、2年経てば、役所の人事担当者があっせんして、関係の業界に天下ることは許されていました。これでは、公正さが疑われます。そこで、今は、役所のあっせんそのものが禁止され、監視委員会がチェックしています。一方で、個人の能力や人脈があれば退職してすぐでも、民間企業への転職は可能です。役所が間に入らないことがポイントです。

今回の事件では、補助金をもらっている私立大学に、その補助金を審査していた担当局長が天下りました。しかも、それが文部科学省のあっせんだったのです。これは完全に、法律違反ですし、もっとも悪質なケースです。一強多弱の政治状況の中で、官庁もゆるみが生じています。このようなことが二度と起きないように、しっかりと監視していかなければなりません。

私は、46歳の時に財務省からトヨタ自動車に転職しました。これは役所のあっせんによる天下りではなく、当時の奥田碩会長との個人的なご縁から、渉外部の部長として採用してもらったのです。若い時に、民間企業の経験を積むことができたことは本当に幸運でした。その後、財務省や経産省の若手官僚が続々と役所を辞めて起業したり、民間企業に転職するようになりました。歳をとってから天下るのではなく、早めに民間にチャレンジする風土を根付かせたいものです。

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