「共謀罪」法案に賛否両論 弁護士会集会

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について議論する、和歌山弁護士会(畑純一会長)主催の「共謀罪法案(テロ等準備罪)を考える県民集会」が10日、和歌山市北出島のプラザホープで開かれ、司法関係者らが基調報告やパネルディスカッションで賛否両論を展開し、約100人が聴き入った。

基調報告では、日本弁護士連合会共謀罪法案対策本部事務局長の山下幸夫弁護士が同法案の問題点を指摘。同法案は犯罪の合意を共謀と見なし処罰するとしているが、日本の法律では行った結果(既遂)に対する処罰が原則であり、「共謀しているかどうかは国家が日常的に市民の活動を監視しないと分からない。令状によらない尾行や張り込みなどの任意捜査が容易になるのが最大の問題だ」と述べた。

パネルディスカッションでは、和歌山弁護士会共謀罪法案対策PTの藤井幹雄座長を進行役に、同会の山崎和成、波床昌則両弁護士と共同通信社の名波正晴和歌山支局長、山下氏が議論した。

名波氏は、無差別殺人や大量殺人の準備行為に対しては、銃刀法や、共謀したが実行犯でない者を罰する「共同共謀正犯」の理論があるとし、「既存の法律や判例で十分に対応できるのではないか」と話した。

波床氏は、戦前の治安維持法を例に「法案としては立派でも、(犯罪を)どう認定し、どんな捜査手法にするかイメージしないといけない。誤りなく運用できるのか」と疑問視し、拡大適用などの恐れを指摘した。

一方、特殊詐欺の問題に詳しい山崎弁護士は、法案に賛成の立場を表明。「組織犯罪が巧妙化しており、犯罪対策として必要だ。今回の法案は過去に廃案となったものより条文上で縛りがかかっている」と述べ、必要性を強調した。

山下氏は、政府が法整備を急ぐ理由として挙げる「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の批准について、「日本は13のテロ防止関連条約に加盟している。この条約を批准した187カ国のうち、批准に当たって新たに共謀罪や参加罪を制定したのは2カ国しかない」と説明した。

白熱したシンポジウムが行われた

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