子ども保険は現役世代に不公平 消費税で子育てを

岸本 周平

 政府与党から、子育て支援の財源を年金保険料に上乗せして取る「子ども保険」の構想が出てきました。厚生年金で労使それぞれ0・1%、国民年金で月160円上乗せして、月1万5千円の児童手当を5千円増やすというものです。
 一見すると子育て世代にやさしい制度のようですが、子育ては保険という仕組みにはなじみません。保険は失業や、病気など誰もが負うリスクをカバーするものです。子どものいない人まで保険料を取るのは理くつが合いません。
 何より、定率、定額の保険料は所得の低い人ほど負担の割合が高くなります。いわゆる逆進性の高いしくみです。国民は増税には反対でも、保険料なら仕方がないかと思って、これまでも社会保険料は限界まで引き上げられてきました。厚生年金では月収の約18・2%(労使折半)です。社長さんも新入社員も同じ率です。約2割の負担は、これ以上引き上げられません。
 しかも、今の社会保障の問題は、高齢者への給付が手厚い一方その負担が少なくて、現役世代との間に大きな不公平があることです。年金保険料では高齢者の負担はゼロです。これでは、選挙対策だと言われてもしかたありません。
 私も、子育て支援を充実することには大賛成です。子育ての予算がGDP比で先進国最下位の日本の実情は問題です。北欧の3分の1、フランスの2分の1ですから。しかし、その財源は、不公平な保険料よりもすべての人が薄く広く負担する消費税が望ましいと考えます。
 今、8%の消費税は引き上げが2回延期されていますが、次に10%に引き上げる際に、1%分を幼児教育や保育の拡充にあてるように再設計すべきです。その際にも、現金給付よりも保育サービスの充実や放課後の補習授業などの現物サービスに使えば、教育格差の是正につながります。子育て支援の財源には、医療費のムダづかいやお金持ちの高齢者の基礎年金(税金が使われています)をカットするなど、まだまだ工夫の余地があります。耳ざわりは良いですが、子ども保険には反対です。

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