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和歌山さんぽみちプロジェクト

家康紀行(27)静岡名産「三ヶ日みかん」

みかんの里資料館

前号では東海道三大関所の一つで紀州藩の御用宿が残る「新居関所」を取り上げた。浜松を取材する中で、和歌山とのつながりを見つけた。今週は浜名湖北岸にある三ヶ日(みっかび)地区を紹介したい。
三ヶ日地区は東海道の迂回路である姫街道に面し、古くから三ヶ日宿として栄えてきた。近年は静岡県を代表する温州みかんの産地として名が知られ、「三ヶ日みかん」のブランド名で主に東北から中部地方の店頭に並ぶ。
三ヶ日みかんの起源をたどると「紀州みかん」に由来する。江戸中期(享保年間)、三ヶ日地区の平山に住む山田弥右衛門(やえもん)が西国巡礼のため紀州を訪れた。その際、和歌山県南部(那智という説がある)から紀州みかんの苗木を1本持ち帰り、自宅の庭の隅に植えたという。
その後、このみかんの香りが良く甘くておいしいと評判になり、数十本の苗木をつくり自宅近くに植えられ、いつしか地区全体に栽培が広がったとされる。
以降、200年程は紀州みかんの栽培が続いたが、天保年間になり「温州みかん」の栽培が取り入れられてからは、実が小さく種が多い紀州みかんの価値が下がり、明治からは温州みかんが農園で栽培されるようになった。大正に入りみかんの市価が上がると栽培農家の数が増え、生産量の増加とともに全国に広まった。
これらの歴史を紹介する施設・みかんの里資料館が地区内にある。廃校になった小学校の校舎を利用しており、館内にはパネル展示をはじめ、かつて使われた農機具や地区内の写真が飾られている。施設を管理する男性職員に筆者が和歌山から訪ねたことを話すと「30年前、両県の商工会が交流会を催し和歌山へ行ったことがある」と思い出を語ってくれた。次週に続く。

(次田尚弘/浜松市)