「華岡青洲の妻」上演 劇団新派が紀の川市へ

 和歌山市出身の作家・有吉佐和子の代表作「華岡青洲の妻」が9月22~30日、劇団新派により大阪市中央区の大阪松竹座で上演される。紀の川市出身の医師で世界で初めて全身麻酔手術を成功させた華岡青洲(1760~1835)と家族の生活を描く。4日には青洲を演じる喜多村緑郎さんや母・於継(おつぎ)役の水谷八重子さんら4人の出演者が、紀の川市西野山の青洲の里で製作発表会を開いた。

 同作品は、昭和41年に刊行され、華岡青洲の名前を飛躍的に広めたとされる。青洲が京都で医学の修行をしている間は仲良く助け合っていた母・於継と嫁・加恵、妹・小陸らの関係が青洲の帰郷後に一変し、於継と加恵の間に深刻な対立が発生。麻酔薬の研究と乳がんの手術実現に意欲を燃やす青洲を巡って生じた、嫁姑同士の壮絶な愛の争いを描いた。

 この日、出演者の水谷さん、喜多村さんの他、妻・加恵役の市川春猿改め河合雪之丞さん、小陸役の波乃久里子さんが来和。青洲の里を訪れた一行は、ファンが見守る中、華岡家の墓地に参り、青洲の住居兼診療所「春林軒」を見学。同市の中村愼司市長も同席した。スタッフから現存する江戸時代の診療所跡は全国的にも珍しいことや、敷地内に医学を学ぶ塾や入院施設まで設置されていたことを紹介された出演者たちは驚きの表情を見せていた。

 喜多村さんは同作の印象について「世界の医学の礎を築いた話と細かい人間の機微が描かれており、これほど素晴らしい作品があったんだと思った」と絶賛。「(大阪は)お膝元に近く、変な芝居はできない」と意気込みを語った。

 水谷さんは「(青洲の取り組み)は世界に誇るべきこと。額に汗して舞台に務めたい」と熱を込め、波乃さんは「大好きな役。初めてゆかりの地を訪れ涙が出た」と喜びを表現。河合さんは「地元の皆さんの思いも背負い、精いっぱい演じたい」と話した。

 観劇料は1等席1万2000円、2等席7000円、3等席4000円。チケットぴあなどで取り扱い。

春林軒を訪れた出演者ら(右から2人目から喜多村さん、水谷さん、中村市長、波乃さん、河合さん㊧)

春林軒を訪れた出演者ら(右から2人目から喜多村さん、水谷さん、中村市長、波乃さん、河合さん㊧)

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