化学業界の安全に貢献 花王がRC優秀賞

 和歌山市湊の花王㈱和歌山工場(松下芳工場長)は、化学業界で無事故・無災害を目指す活動に顕著な功績のあった企業に贈られる「レスポンシブル・ケア(RC)賞」の優秀賞を受賞した。同工場は、化学プラント設備の保安力強化の仕組みで高い評価を受け、同社の海外工場や他社とも共有し、化学業界全体の安全な工場操業の推進に貢献していく考えだ。

 RC賞は、一般社団法人日本化学工業協会(日化協)が平成18年に創設した。化学工業に携わる企業が、無事故・無災害を目指す活動に積極的に取り組む姿勢を醸成するのが目的。同協会加盟177社の中で、顕著な成績を残した企業に贈られる。

 同工場は「保安強化・危険源管理」をテーマに掲げ、化学プラント設備の保安力強化として「変更管理体制」「設計Know―Why(ノウホワイ=なぜを知る)伝承」「異常現象時の行動マニュアル」の三つの仕組みを構築。昨年12月の一次書類審査、ことし2月の二次審査プレゼンテーションなどを経て受賞が決まった。

 高圧ガス保安協会の機関誌「高圧ガス」50号によると、平成23年から24年にかけて、化学企業で化学プロセスの反応暴走などにより、化学工業のプラントで爆発や火災が発生し、死者を伴う深刻な事故が3件、立て続けに発生した。その共通の要因として、非定常時のリスクアセスメント(危険を低減するための方法)が十分に実行されていなかったこと、トラブル対応などの経験が豊富な団塊世代が大量に引退したこと、過去の類似した事故の教訓が生かされていないこと、などが挙げられるという。

 業界に共通したこれらの課題の克服に向け、同工場は安全を守るための留意点を「見える化」し、社員のキャリアに関係なく安全操業を可能にすることを目指したさまざまなシステムを構築した。

 重合発熱設備に関しては約3年かけて「異常現象発生時のマニュアル」の強化に取り組んだ。設備において、時間の経過、温度、圧力の相関関係を表す線状グラフを作成し、通常の運転管理範囲からの逸脱を示すA点、異常事態のB点、緊急事態のC点を定義。異常、緊急事態の条件を明確化したことで、被害の最小化、二次災害防止につながり、必要な知識を有効に継承することにもなる。

 同工場地区サービスセンター安全の百谷佳久課長によると、生産現場で環境や条件に変化が起きたときに必要となる変更管理体制には、人・方法・原料・設備の4点が重要で、最も大切なのは現場業務に当たる人の「気付き」だという。知識が継承されることで、気付きを生みやすくもなる。

 百谷課長は「製品の安全性とともに、工場の近隣で暮らしている住民の方々に暮らしの安全と安心をお届けするべく、日々工場の安全管理を粛々と行っていく」と話している。

受賞した和歌山工場保安力強化プロジェクトチームの皆さん

受賞した和歌山工場保安力強化プロジェクトチームの皆さん

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