IR誘致の阻止へ 反対組織が発足記念講演

県と和歌山市が進める統合型リゾート(IR)の県内誘致を阻止しようと、弁護士や市民らで構成する反対組織「カジノ問題を考える和歌山ネットワーク」が11月30日に発足した。ホテルや国際会議場とともにIRを構成する目玉施設のカジノについて、ギャンブル依存症の拡大や地域からの消費流出につながることを懸念し、反対の署名集めや市民集会の開催などを通じて、誘致反対の世論形成を目指すとしている。

県と市が目指す和歌山マリーナシティ(同市毛見)へのIR誘致に反対する市民らは5月に同準備会を結成し、7月には市民集会も開いてきた。県がIRの制度設計を㈱トーマツに委託し、地元経済界も誘致に前向きな動きを見せる中、組織を正式に発足させ、発信力の強化を目指すことを決めた。

和歌山市の県民文化会館で開かれた創立総会では、代表に弁護士の岡正人さん、副代表に多重債務の問題に取り組む市民団体「あざみの会」の新吉広さんの就任が決定。消費者問題に詳しい岡代表は「経済界の動きを見て組織の正式発足を決めた。多くの人にカジノの危険性を知ってもらい、誘致断念に追い込みたい」と話した。

総会後は、ギャンブル依存の問題に詳しい井上善雄弁護士が「ギャンブルによる消費者被害とカジノ」と題して講演。

候補地のマリーナシティについて「視察したが、面積はマカオやシンガポールのIRと比較にならないほど狭く、周辺に遊び場も少ない」と分析。カジノ区域への入場を外国人に限るとする県と市の方針については「経営が成り立たないのは明らか。地域経済の活性化に取り組んでいると住民に思ってほしい行政のパフォーマンスではないか」と疑問を示した。

ギャンブル依存症に関しては、厚生労働省の調査から国内のギャンブル依存症患者が約320万人と推計されることを紹介し、「太平洋戦争で戦死した日本人の数に匹敵する。少ない数字ではない」と強調。裁判所の破産開始手続きで借金の原因がギャンブルにあると判断された場合、債務の支払い義務がなくなる「免責」が難しくなり、家族らが借金の返済に追われるとした。

ギャンブル依存を防ぐ規制の運用については、パチンコ店を例に挙げ、風俗営業法で未成年の入店が禁止されているにもかかわらず商品交換のときしか年齢確認がされていない実態があると指摘。「カジノを法で規制しても正しく運用されていくか疑問だ」と述べた。

講演する井上弁護士

講演する井上弁護士

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