和歌山が目指すIRは 研究者らシンポジウム

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の和歌山県内誘致について考えるシンポジウムが15日、和歌山市の県民文化会館で開かれ、IRに詳しい研究者や経済団体の幹部らが出席。和歌山が目指すべきIRの姿やIRを通じた観光の振興などについて、講演やパネルディスカッションが行われた。

 県や和歌山市、地元経済団体などで構成する和歌山IR推進協議会などが主催。県内外から企業関係者を中心に約300人が参加した。
 和歌山が目指すIRの姿について、県の髙瀨一郎企画部長は候補地の和歌山マリーナシティ(和歌山市毛見)が海に面していることなどを生かし、マリンスポーツなども楽しめるリゾート型を考えていると説明。IRを構成する国際会議場や展示場などの大規模施設にふれ、「巨大なものは難しいが、小規模で質の高い会議場を造り、国際的な学会などを誘致したい」と話した他、関西国際空港とマリーナシティを結ぶ高速船の就航にも意欲を示した。

 京都大学公共政策大学院の佐伯英隆名誉フェローは「IR形態の多様性について」と題して講演。日本の高級ホテルは客室数がマカオやシンガポールの約4分の1にすぎないことを指摘し、「IRとしての国際競争力に不安を感じる。アジア各国と別の路線を追求しないと生き残れないのでは」と話した。高野山や日光など日本の人気観光地は夜の時間を楽しめる場が少ないことを課題に挙げ、IRは解決策の一つになる可能性があると話した。

 IRを巡るさまざまな論点について行われたシンポジウムには、和歌山大学経済学部の足立基浩教授やフランスのIR運営事業者・バリエールグループのジョナタン・ストロック氏などが登壇。

 足立教授はIR誘致が県内の観光客増をもたらし、地方創生につながると訴え「観光を盛り上げる手段の一つになる。家族で気軽に楽しめ、地元の人が受け入れられる程度のものが望ましい」と話した。

 ストロック氏は同社が実践しているギャンブル依存症の防止に向けた取り組みを解説。カジノに関する情報の積極的な広報や入場時の身元確認などに加え、依存症の恐れがある顧客とはカジノ区域の入場回数に上限を定めた契約書を交わしていると紹介した。

 IRの誘致をまちづくりにどう生かすかを巡っては、政府のIR推進会議で委員を務める大阪商業大学アミューズメント産業研究所の美原融所長が「IRだけでは(効果が)不十分だ。和歌山固有の魅力をつくり、地域を良くするきっかけにしてほしい」とアドバイスを送った。

 終了後に報道陣の取材に応じた髙瀨部長は誘致実現への手応えについて「国会議員の間で地方型IRも必要ではないかという声が大きくなってきている」と話した。

さまざまな観点から意見交換するパネリストたち

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