郷土の魅力伝えて10年 『ほうぼわかやま』

 歴史と文化に彩られた和歌山の魅力を紹介する情報誌『ほうぼわかやま』が創刊10周年を迎えた。県民の郷土愛を育む一助になればと、和歌山県和歌山市梶取の印刷会社㈱ウイングが自費で発行を重ねてきた。編集長の岡京子さん(52)は「読者や多くの方の協力でここまで来られた。ふるさとの良さを再認識し、学ぶことの多い10年だった」とこれまでの歩みを振り返った。

 「和歌山には何もない―」。同社の松田好司前社長(故人)が県外で仕事をした際、和歌山の良さをうまく人に説明できず言葉に窮した経験が創刊のきっかけ。「私たちは自分たちが暮らすまちの文化や歴史のことをよく知らないのではないか」との思いから、「自分たちの手で郷土の魅力を掘り起こし、伝えよう」と始めた。

 印刷のプロとしてデザインや紙面構成のクオリティーの高さが強み。毎号、郷土色豊かな読み応えある企画や美しいカラーグラビアが目を引く紙面を作ってきた。当初は慣れない編集作業に手探りが続いたが、岡さんの指導のもと、社員が交代で取材や原稿の執筆などに携わり、10年で腕を上げた。 思い出深いのは、「チンチン電車」(7号)と「黒潮国体」(12号)の特集。当時の貴重な写真とともに記事を掲載したところ、中高年の読者から「懐かしい」「こんな話知らなかった」などと大きな反響があった。読者の年齢層も広がり、年配の世代が若者に「昔はこうだったのよ」などと「ほうぼ」がコミュニケーションのきっかけになっているのもうれしい。

 20号目となる最新号では、古代から「リゾート地」「信仰の地」として都人らの憧れの地だった「紀伊国」の魅力をテーマに企画。日本文学研究者のロバート・キャンベルさんのインタビューも実現した。

 「ほうぼ」とは、和歌山弁で「あっちこっち」という意味。「まだ知られていない観光資源や、取り上げたい企画は山ほどある」と松下忠代表取締役(50)。「ぜひ多くの方に手に取ってもらい、郷土の素晴らしさに気付き、誇りを持ってほしい。今後も『ほうぼ』を通じて和歌山の活性化に貢献したい」と語った。

 年2回、8月と12月に1万部発行。市内の郵便局や市観光協会、県民文化会館などで設置、配布している。問い合わせはほうぼわかやま編集室(℡073・453・5700)。

今後の方針を話し合う(右から)岡さん、松下代表取締役ら

今後の方針を話し合う(右から)岡さん、松下代表取締役ら

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