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和歌山さんぽみちプロジェクト

家康紀行(49)富士市「岳南電車」の取り組み

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 前号では、中心市街地活性化を目的に、住民の有志らにより地域が持つ食の魅力を再発見し、商標化と定義の明確化により御当地グルメのブランド化に成功した「富士宮やきそば」の事例を取り上げた。今週は舞台を南に移し、夜景によるまちおこしに取り組む富士市の鉄道を紹介したい。
 富士市は人口約25万人。富士川や富士山の伏流水など豊富な水資源を生かし、数多くの製紙工場が立ち並ぶ。東海道新幹線の車窓から工場群の向こうに望む富士山に歓声を上げたことのある方も多くいらっしゃるだろう。まさにその風景を作りだしているのが富士市である。
 新富士駅から東へ約3㌔の所にある吉原(よしわら)駅。ここから内陸部へと続く鉄道がある。「岳南(がくなん)電車岳南線」。吉原駅―岳南江尾駅を結ぶ9・2㌔の路線を持つ。かつては製紙工場群との貨物輸送を行っていたことから工場群を縫うようにして走る路線が特徴。
 2014年、この鉄道と工場群が織りなす景色が「日本夜景遺産」に認定された。昔懐かしいレトロな駅のつくりや、そこから漏れる明かり、夜間も操業を行う工場の夜景が沿線全体に広がるものとして評価され、鉄道としては初めての認定となった。また、昨年には「日本百名月」にも認定された。
 岳南電車では、車両の明かりを暗くし車掌による沿線紹介とともに、車窓に広がる夜景や月明かりを楽しむ「夜景電車」を企画。運行日は同社のウェブサイトで確認できる。
 昼間は富士山を望み、夜間は工場夜景を楽しむ。昼間とは異なるノスタルジックな雰囲気が乗客の心に哀愁を感じさせながらも、夜通し稼働する工場群から力をもらえる。高台から見下ろすのとは異なる夜景の価値がここにある。
(次田尚弘/富士市)