印刷術と美術の表現 14日~近代美術館で

 展覧会「産業と美術のあいだで―印刷術が拓いた楽園」が14日から6月24日まで、県立近代美術館(和歌山県和歌山市吹上)で開かれる。同館が所蔵する版画の名品を中心に、印刷資料や絵画などを展示。印刷術という一つの産業が、いかに美術の表現を豊かで新鮮なものにしてきたかを紹介する。

 主に木版の技術によって、古くから印刷文化を誇る日本。高度に洗練された浮世絵や書籍、身の回りのさまざまな印刷術が人の創造力を刺激し、多彩な美術作品が生み出されてきた。

 明治に入り、文字の印刷には活版が、図版の印刷には銅版、木口木版、石版の技術が西洋からもたらされ、近代的な印刷技術が発展。多様な技術による印刷物が発行されていった。

 複製を前提とした挿絵などの制作だけでなく、印刷術を創作の技法に展開させた版画が関心を集め、油彩画などの画面にも印刷物が描かれたり、貼られたり。一般的な絵画の
イメージとして統一された絵画空間に遺失なものを加えることで、作品の印象を変える効果を上げてきた。

 今展では佐伯祐三の「広告のある門」や高井貞二の「感情の遊離」、若山八十氏の豆本「変ないきもの」などを展示する。

 学芸員による展示解説は29日、5月5日、26日、6月23日の午後2時から。観覧料は一般510円、大学生300円。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。

前田藤四郎《時計》1932年 リノカット、銅凸版

前田藤四郎《時計》1932年 リノカット、銅凸版

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