岡公園の長屋門も 5件が県指定文化財に

和歌山県教育委員会は、和歌山市の旧大村家住宅長屋門や、県立博物館で保管されている「那智参詣曼荼羅・熊野観心十界曼荼羅」を含む絵画や歴史資料5件を、新たに県の文化財に指定した。また、岩出市の旧県会議事堂を含む5件を、国指定の文化財となったことにより解除した。これにより、県指定文化財は582件となった。
旧大村家住宅長屋門は、江戸末期に紀州藩士の大村家が建設。門構えと長屋が一体となった典型的な長屋門で、壁に平瓦を張り、継ぎ目にしっくいを盛り上げて塗った「なまこ壁」などの重厚な外観が特徴。
1897年ごろ、白樫家によって和歌山市堀止東に移築。2014年には取り壊しの危機もあったが、県が保存を決め17年には現在の同市岡山丁の岡公園に移築された。和歌山城下の武家地の長屋門では唯一の遺構で高い価値がある。
「那智参詣曼荼羅」は那智の滝、熊野那智大社殿、青岸渡寺など、那智山の景観を描いた絵画で、1596年ごろまでに成立していたとされる。「熊野観心十界曼荼羅」は、人間の一生を山に例えた「老いの坂」や、人間界、さまざまな地獄の場面を描いている。民衆向けに製作され、熊野比丘尼が絵解きを担った。
2幅は町絵師による江戸時代中~後期ごろの作とされる。両者が同時に伝来する県内唯一の事例で、熊野信仰を象徴する資料として貴重という。
また、県立博物館が所蔵する熊野灘の古式捕鯨の様子を描いた「紀州熊野浦捕鯨図屏風」は、古座組、太地組、三輪崎組の三つの捕鯨組織が協力し合う場面や、鯨の陸揚げや解体の様子などを伝えている。当時の熊野灘の捕鯨の実態を忠実に伝える貴重な資料で、屏風形式の大画面も他にほとんど例がないという。
この他、高野町の考古資料「金剛峯寺境内出土の地鎮・鎮壇具」、みなべ町の無形民俗文化財「須賀神社の秋祭」が指定された。

岡公園に移築保存された旧大村家住宅長屋門(県教委提供)

岡公園に移築保存された旧大村家住宅長屋門(県教委提供)

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