龍灯献ずる乙姫の舞い 紀三井寺の千日詣

 一日のお参りで千日分の功徳を得られるとされる「千日詣」が9日、和歌山県和歌山市の紀三井寺で行われた。起源となった伝説を再現する「龍宮乙姫龍灯献上行脚」があり、初のオーディションで乙姫役に選ばれた近畿大学付属和歌山高校3年の坂本こころさん(17)が、きらびやかな衣装で女官と共に参道を歩き、龍灯を奉納。福を授かろうと訪れた大勢の参拝者が見入った。

 約1250年前、同寺を開いた為光上人が大般若経を書き写した8月9日、龍宮の乙姫が海の中でも消えない龍灯を献上しようと同寺を訪れ、以来、毎年この日に千日分の功徳が得られる灯りがともるようになったという故事に由来する行事。故事を知ってもらい、地域活性化につなげようと、昨年から献上行脚が行われている。ことしは4月に実行委員会が結成され、初のオーディションで乙姫役と女官役が選ばれた。

 千日詣は毎年恒例の地元の子どもたちによる和讃奉納太鼓から始まり、日が暮れると「龍宮乙姫、龍灯献上、一日千日、福徳招来!」という使者の声が響き、乙姫が登場。参道の周りにはカメラやスマートフォンを構えた多くの参拝者が並び、乙姫は長い羽衣を手にした女官を連れてその間をゆっくりと歩いた。

 本堂に着いた乙姫は音楽で出迎えられ、女官と共に紫や青の色鮮やかな布と扇子を翻して踊る姿に本堂を囲む人だかりからは拍手が起こった。最後に乙姫が龍灯を手渡すと、前田泰道貫主は「間近で結縁幸いなり。千日分の所願成就を祈られたし」と乙姫を迎えた。最後は拾うと福が授かるといわれる御幣を投げる福棒投げがあり、境内はにぎわった。

 大役を終えた坂本さんは「やり切った気持ちでいっぱい。こんな衣装を着る機会もそうそうないので、あまり体験しない緊張感を味わった。みんなで練習以上の力を出せたと思う」と話していた。

前田貫主に龍灯を手渡す乙姫とそれを囲む女官たち

前田貫主に龍灯を手渡す乙姫とそれを囲む女官たち

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