本物の和食を伝えたい 赤間さん普及活動

大きなスーツケース二つに背中にはリュックサック。中には薄口しょうゆに昆布、カツオ節。使い慣れた調理器具や和食器を入れることもある。和歌山県和歌山市加太の旅館「大阪屋ひいなの湯」の料理長、赤間博斗さん(47)は「本物の和食を伝えたい」と世界を飛び回っている。

海外での活動を始めたのは2014年、イタリアのトリノで開かれた食のフェスティバルに参加した際、同じ会場に出展していた和食ブースに目を留めたのがきっかけ。外国人の料理人が作った奇抜なアレンジの料理が「和食」として紹介されていることにショックを受けた。「これは違うだろうと。日本人の僕たちが正しい和食をきちんと伝えてこなかったせいだ」。

和食が13年にユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、海外では「本物の和食を知りたい」との声が高まっている。だが、日本人の料理人が腕をふるう店は少なく、和食ブームの一方で「日本の食文化」が正しく理解されているとは言い難い状況だ。

赤間さんは15年に台湾で初めて料理教室を開いたのを皮切りに、オファーを受けてイタリアやブラジル、アメリカ、インドネシアなどを訪れ、一般向けに料理教室を行うようになった。

披露するのは、だし巻きや肉じゃが、豚の生姜焼きといった素朴な家庭料理から、ミニ懐石や松花堂弁当などさまざま。食材は現地で調達するが、味や技法は「和食の基本」を忠実に守って作る。

特に大切にしているのは、日本の四季や季節ごとの行事、米一粒も大切にする「日本人の心」などの話。「独特の歳時や行事ごとに欠かせない食材があって、和食文化が育まれてきたことも理解してほしい」と願う。

「うちのパンおいしいよ」「ここのワインは世界一さ」。どの国に行っても、地元を愛し、自分たちの作ったものへの愛着を熱く語る人たちに出会う。「日本人は発信下手ですね。和歌山にもいいものがたくさんあるのに、知られていないのは本当にもったいない」。荷物にはいつも、県産食材をしのばせ、行く先々で和歌山を精いっぱいPRして帰ってくるという。

「海外に出て価値観が180度変わった」と赤間さん

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