歌人・西行の人物像に迫る 生誕900年展
紀の川市に生まれ、平安時代末期に活躍した歌人・西行(1118~1190)の生誕900年を記念した特別展「西行―紀州に生まれ、紀州をめぐる―」が13日、和歌山県立博物館(和歌山市吹上)で始まった。国宝11件、重要文化財11件を含む282点を展示。同館の坂本亮太学芸員は「伝説によるものと確かな資料を併せて、西行の人物像に迫る初の展覧会。歌人としてだけでなく、武士として仕えたことや、ゆかりの地が県内にも多くあることを知ってもらいたい」と話している。
特別展は、同館と、西行について研究する西行学会が共催。11月25日までで、前期(28日まで)、後期(30日~)で展示替えがある。
西行は、紀伊国田中荘(現在の紀の川市)の武士の家に生まれた。鳥羽上皇に仕える「北面の武士」として活動していたが、23歳で出家。高野山を主な拠点に約30年間隠遁(いんとん)生活を送りながら、全国各地を旅して多くの歌を残した。
県内では、千里の浜(みなべ町)や那智の滝(那智勝浦町)などを訪れ、『新古今和歌集』にも94首が入選。文治6年(1190)に弘川寺(大阪府河南町)で亡くなったとされている。
12日には同館で関係者を招いた内覧会が行われ、坂本学芸員が展示資料について解説した。
このうち、西行直筆の書状は特に貴重という。現存するのは全国で5点のみで、そのうち3点が、今回の前期展示で紹介されている。高野山の金剛峯寺が所蔵する国宝の「僧円位(西行)書状」は、西行が平清盛に頼んで、高野山への課税を免除してもらったことが記されている。
また、西行は没後すぐに伝説化され、さまざまな物語が作られたといい、西行が僧侶になるいきさつから、亡くなるまでの生涯を描いた「西行物語絵巻」は多種多様。出家時に剃髪される姿や、吉野の桜を楽しむ姿が描かれ、坂本学芸員は「同じ場面を描いていても絵が違っているものがあり、見比べると発見がある」と紹介した。
学芸員による展示解説は21日、11月23日、24日に行われる。午前10時半~(11月23日は午後1時半~)。問い合わせは同館(℡073・436・8670)。
特別展の関連イベントも開催。連続講座「西行 再発見!」(20日~11月17日に全4回)の他、西行学会大会(27、28日)では記念講演や研究発表、シンポジウムが行われる。会場は同館隣りの県立近代美術館2階ホール。いずれも事前申し込み不要。
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