外国人労働者をどう受け止めたらよいのか? ―多文化共生社会と人権問題

岸本 周平

 政府は外国人労働者の受け入れを増やす法案を提出。昨年11月に、技能実習生の滞在期間を3年から5年に延長しましたが、なお、人手不足が深刻なため、業種を限って新たに5年の在留資格を与える案です。
 現状、外国人労働者は過去5年間で60万人増え、昨年128万人に。まさに倍増です。帰国する者もいますので、昨年は1年間で40万人の外国人が参入。これは世界で5番目の多さです。すでに「移民大国」とも言える数字です。この5年間の労働力人口増加の4割を外国人が占めている状況です。
 私は、目先の人手不足を理由に、安易に10年間在留の外国人労働者の受け入れを認めることには反対です。政府案は外国人を低スキル、低賃金の労働力とみなし、人権を無視した働き方を前提としているからです。何より、人道的な観点から家族の帯同には柔軟に道を開くべきですし、権利保護のために同一労働同一賃金の具体的な仕組みづくりが必要です。そのために、社会保障にどれだけの影響があるのか、私たちの負担が増えるのか減るのか、科学的な根拠を示して議論するべきです。
 外国人労働者の円滑な社会定着をはかり、分断を生まないために、本人とその家族への日本語教育は不可欠です。私が米国に留学した時、子どもたちはESL(English as a second language)の授業を無料で受けることができ、大いに助かりました。これまでの日本の政策はいわゆる「ゲストワーカー政策」で、外国人は一時的な労働力であり、出身国に戻る前提でした。欧米では、段階的に、外国人材を永住者として受け入れるものの、文化の違いを無視する「同化政策」が取られました。その結果、社会の分断が進んだため、今は、文化が違うことを法律や制度で保護、奨励し、さらに相互理解や共感を生み出す「多文化共生政策」が行われています。日本でも、新入生の7割以上が外国人という小学校も出てきています。日本人の生徒は、「この学校では、大勢の外国の子どもと友達になれるのが良い」と胸を張っています。
 「移民」と呼ぶかどうかなど、言葉遊びをしているいとまはありません。和歌山の中小企業でも、タイやベトナム、中国の外国人材を正社員で雇っている会社が何社もあります。楽天やユニクロのような大企業だけではありません。外国人労働者を私たちの仲間として受け入れ、その人権を最大限に尊重する多文化共生社会をつくっていきましょう。

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