見えない苦しみ知って 高次脳機能障害講習

 事故や病気による脳の損傷で記憶や社会的行動に障害が残る「高次脳機能障害」について学ぶリハビリテーション講習会「明日へ、あきらめない」(同実行委員会主催)が22日、和和歌山県歌山市毛見の県子ども・女性・障害者相談センターで開かれ、障害の当事者や支援者ら100人以上が参加し、支援機関の取り組みの紹介や当事者の話に耳を傾けた。

 高次脳機能障害には、自分のいる場所が分からない、新しいことが覚えられないなどの症状があり、外見からは分かりにくく、本人も認識が難しい「見えない障害」と呼ばれている。県では同センターが県高次脳機能障害支援拠点機関となり、相談を受け付けているが、当事者や家族の状況は厳しいという。

 講習会では、障害当事者で文筆家の鈴木大介さんが自身の体験について講演した。鈴木さんは3年前に脳梗塞を発症し、高次脳機能障害に。体のまひはリハビリで回復したが、日常生活に戻ると二つの仕事を同時進行できなかったり、相手の言葉が聞き取れずパニックに陥ったりし、病気になる前と同じ生活ができなくなった。

 絶望する中、障害の重さを受け止めた鈴木さんは、サングラスや耳栓で外部からの刺激を制限し、メモを持ち歩くなど工夫をして、過ごしやすい環境を調整してきた。以降は生活の中で今の自分ができないことを洗い出し、調整してできる限り、元の生活に近づけていった。

 鈴木さんは「回復には当事者と周囲が障害を受容することが必要」と語り、早く受け入れることでリハビリの機会も増え、苦しみを理解してもらえないことから発症するうつ病のリスクが下がると話した。

 支援者には、当事者は人に頼ることで元の生活が送れる可能性があること、当事者の頭の中には病気前の本人の姿が残っていることを伝え、「苦しみをなかったことにしないで支えてほしい」と呼び掛けた。

 講習会ではこの他、同センターでの支援と取り組みの紹介、家族の交流会などが行われた。

「回復には周囲の理解が必要」と鈴木さん㊧

「回復には周囲の理解が必要」と鈴木さん㊧

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