鯨肉がまた庶民のものに IWC脱退と日本の方針

鶴保 庸介

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
2019年は今上天皇がご退位、皇太子徳仁親王がご即位なさり、元号が変わる大きな節目となる一年ですが、朝鮮半島出身労働者問題や自衛隊哨戒機に対するレーダー照射問題など韓国をめぐっての諸懸案、厚労省による毎月勤労統計の不正調査問題など、大きな政治課題を抱えた波の高い船出となってしまいました。
そんな中、昨年末からメディアをにぎわせましたIWC(国際捕鯨委員会)からの脱退について本日は取り上げたいと思います。このコーナーでも以前ご報告しましたが、昨年私はブラジルで開かれたIWC総会に出席してきました。そもそもIWCとは鯨類の持続的な「活用」と「保護」を目的として設立された国際組織であるにもかかわらず、昨年の総会では反捕鯨国が提出した「フロリアノポリス宣言」が採択され、鯨類の「保護」だけを目的とした組織に変わりはててしまった、というのはすでにご報告した通りです。
これを受けて今回、日本はIWCからの脱退を決断しましたが、一部メディアの中には、松岡洋右首席全権が国際連盟を脱退して国際社会での孤立を深め、その後戦争への道を歩んでいった歴史を彷彿とさせる、などといった荒唐無稽な論調も散見されました。
これまでもお話ししてきましたが、今回の事案は国際連盟脱退とは全く次元の違う問題です。アイスランドやカナダはすでにIWCを脱退していて、アイスランドは一度脱退してからもう一度入り直しているくらいです。「引き続きオブザーバーとしてIWCに協力し続ける」「南氷洋での捕鯨は中止し、EEZ(排他的経済水域)内に限る」いう日本の方針に対し、オーストラリアやニュージーランドといった反捕鯨国から、歓迎する(welcome)という表明もありました。IWC脱退によって戦争状態になる、と言わんがばかりの論調とはまるでかけ離れたものであることがわかっていただけると思います。
日本は今年の7月から商業捕鯨を再開します。それによって、狂信的な反捕鯨国が難くせをつけてくるでしょうが、それに対抗するためにも、多くが捕鯨賛成国であるアフリカやカリブ海の諸国などと連携をとって現IWCに変わる組織づくりを視野に、国際社会の理解を得る努力が必要になってくるでしょう(昨年末には私もアフリカのギニア共和国を訪れ、日本の方針を説明、理解を求めてきました)。また、その間もオブザーバーとして引き続きIWCに参加し、科学的調査には協力する。そうしている間に、長い間供されることのなかったクジラ肉が、また、庶民のものになって戻ってくることを期待しております。おいしくて安い鯨が手に入るのですから。そうすればもっと国内の理解も深まるのではないでしょうか。少なくとも、われわれ和歌山県人はその時までに世論に迎合することなく、正義を主張し続けることを期待します。

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