平成最後の頂点目指せ 選抜喜ぶ智弁と市高

強豪ひしめく近畿で実力を示し、第91回選抜高校野球大会(3月23日開幕、阪神甲子園球場)への出場を決めた智弁和歌山と市和歌山。「野球王国」でしのぎを削ってきたライバル校は、そろって平成最後の聖地で頂点に挑む。智弁は2年連続13回目、市和歌山は3年ぶり6回目の選抜切符獲得に沸いた25日の両校の様子を詳報する。

和歌山市冬野の智弁和歌山の校長室には、数十人の報道陣が集結。午後3時30分ごろ、高野連から出場決定を告げる電話が鳴り、藤田清司理事長は「ありがたくお受けいたします」と答え、選手たちが待つグラウンドに駆け付けた。「あと2カ月しっかり練習して、甲子園に智弁旋風を吹かせてほしい」との藤田理事長の呼び掛けに、選手たちは表情を引き締め、帽子を空に投げ上げて喜んだ。

現チームは昨春の選抜準優勝時のレギュラーが4人残り、秋は県2次予選で優勝。近畿大会では、公式戦で連敗が続いていた大阪桐蔭を破り、4強に進んだ。

黒川史陽主将(2年)は「夏に初戦で近江に負け、甲子園で1勝することの難しさを感じた。本番までに中軸の得点力を高め、一つひとつ勝ちを重ねて日本一を取りたい」、大阪桐蔭戦で8回2失点と好投した先発候補の左腕・池田泰騎投手(1年)は「近畿の準決勝で明石商業にコールド負けし、少し不安だったので、選ばれたと決まった時はほっとした。甲子園では自分らしい緩急をつけた投球をしたい」と話し、中谷仁監督(39)は「どんな試合展開になっても相手より1点多く点を取って勝つ」と力を込めた。

グラウンドには昨年8月に勇退した甲子園最多勝利の髙嶋仁名誉監督(72)も姿を見せ、教え子たちを祝福。中谷監督と握手を交わし、「選手の中には僕が勧誘した子もいる。本当に良かった」と笑顔を見せていた。

近畿大会4強で出場が確実視されていた智弁に対し、市和歌山は8強でボーダーライン上と見られていたため、六十谷の同校校長室には緊張感が漂っていた。智弁とほぼ同じ午後3時30分ごろ、高野連からの電話が鳴り響き、受話器を取った勝本泰弘校長は「お受けいたします」と引き締まった表情で応じた。

勝本校長はすぐに選手や保護者らが待つグラウンドに向かい、「試合まで全力で個々の課題を十分に見据え、それに向かって努力してほしい。チームなのでお互いが高め合う、支え合うという気持ちを忘れずに練習に励んでほしい。甲子園出場おめでとう」と祝福した。選手は半田真一監督(38)を胴上げし、満面の笑みで青空に向かって帽子を投げた。

米田航輝主将は「まさかと思ったがすごくうれしかった。ことしはバッテリーを中心に守備からリズムをつくるチームになっている。課題は打撃力なので、長打力をつけて自分たちの野球をして勝ち上がっていきたい」と意気込み、半田監督は「前回の選抜(2016年)は初戦で敗退している。出る限りは優勝を目指して頑張りたい。全体的にパワー不足なので、攻撃面を向上させるために体づくりをやってきた。その成果を出し、和歌山の野球を盛り上げたい」と抱負を話した。

両校の出場決定を受け、仁坂吉伸知事は「5年ぶりの2校出場であり、全国に『野球王国和歌山』を改めて印象づけ、頼もしさと力強さを感じます。厳しい練習で培った自分の力と技、仲間を信じて戦ってください」、尾花正啓市長は「和歌山を代表する2校の素晴らしいプレーが、子どもたちや市民に勇気と感動を与えてくれることを強く期待しています」と祝福のメッセージを発表した。

3年ぶりの出場を喜び、半田監督を胴上げする市和歌山ナイン

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全国制覇を目指す智弁ナインを祝福し、中谷監督(前列右)と握手する髙嶋名誉監督

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