BRTを公共交通の核に 油流出の汚染賠償で法改正へ

鶴保 庸介

“BRT”ってご存じでしょうか。バス・ラピッド・トランジット(BusRapidTransit)の略で、連節バスやバス専用道、バスレーンなどを組み合わせ、より多くの人を、より速く、より定時性をもって輸送しよう、というバスシステムのことです。2011年の東日本大震災では、岩手県内の鉄道も甚大な被害を受けました。復旧・復興の計画を練る中で、採算を取るのが難しい地方の鉄道路線をどうするかという議論になり、BRTという新しい公共交通機関を中心にしたまちづくりを進めようと、地元自治体、国交省、JR東日本とが協議を重ね、導入に到ったのです(当時私は国土交通副大臣でした)。気仙沼線は2012年12月22日、大船渡線は2013年3月2日から、JR東日本によるBRTの運行が始まりました。
そんな中、昨年12月からこの大船渡線において、自動運転バスを使った実証実験が行われました。3年前の沖縄北方担当大臣時代、私は沖縄県内の公道でバスの自動運転の実証実験導入に踏み切り、実際に試乗しに現地を訪れました。過疎地における公共交通機関の維持は、多くの県市町村が抱えている悩みの一つで、わが和歌山県も例外ではありません。「自動運転のBRTが地方の公共交通機関の核になり、人々の生活を大きく変える」。そんな思いから、何年も前からこの分野には特に注力してまいりました。本音を言えば、大臣時代に沖縄で行った自動運転の実験も、和歌山県で行いたかったぐらいです。実証実験もここのところ数を重ねてきており、そう遠くないうちに社会実装化できる技術進歩がなされると確信しています。その時にわが和歌山県で迅速に対応ができるのか。今からその備えをしておかねばならない、と考えています。
そして、もう一点ご報告。
海洋で事故を起こした船から流れ出た燃料油による汚染について、その賠償を確実にする法改正案が今国会に提出されます。こちらも、国土交通副大臣であった当時から、私は強い問題意識を持っていました。というのも、ご記憶の方もいらっしゃると思いますが、2013年12月に和歌山県串本町沖で韓国船籍が座礁し、燃料タンクの油が海に流れ出るという事故がありました。刻々と広がる油濁汚染を目の当たりにし、漁業者や地域の方から「油の拡散をなんとかしてほしい」という悲痛な声が毎日のように寄せられたことを今でもはっきりと覚えています。
このような場合、まずは船舶の所有会社(最悪の場合は行政機関)が、油濁防止の網を張ったり、座礁船を撤去したりといった対応を取り、保険会社が保険金を支払うというのが本来あるべき姿でしょう。しかし近年、保険契約違反を理由に(例えば出国前の保険会社による検査の際に指摘されていた箇所を修理しないまま出航した、など)、保険会社が保険金の支払いを拒否する事例が発生していました。そのせいで、船舶の所有会社が事故の後始末をせずに放置する、といった事例が全国で発生していたのです。
今回の法改正により、たとえ船舶の所有会社が倒産したとしても、海上保安庁なり県なり行政機関が対応を取った場合、かかった費用について直接保険会社に請求でき、保険金が支払われるようになります。費用が弁済されるかどうかわからないため、迅速な対応を取ることをためらい、結果として被害が拡大するという悪循環は断ち切れるはずです。

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