ドローンで農薬散布 傾斜地での普及へ

防災や測量など、さまざまな分野で小型無人機ドローンの活用が全国で広がる中、県内でも、進む高齢化で重労働となる農薬散布でのドローン活用が模索されている。ドローンを使った空撮や点検などを行う㈱未来図(和歌山県和歌山市西高松、藤戸輝洋代表取締役)は普及に向けて、同市梅原にあるラボテック・インターナショナルドローンフィールド紀州ラボ内で、ドローンの農薬散布のデモ飛行と、AIを取り入れたスマート農業についての説明会を開いた。

農業関係者ら約40人が参加。同社によると、最近は全国的に農業従事者の高齢化が進み、農薬散布作業が大変な重労働になる中、水稲に関しては使用できる農薬の登録が進みドローンによる空中散布が増えてきているという。

一方で国内では東京、神奈川、大阪、和歌山がドローンによる空中散布の実績はゼロ。その理由として、藤戸代表は「都会での実績がないのはまさに都会だから。和歌山で実績がないのは、複雑な斜面に位置するミカン畑をはじめとした、かんきつ系の果樹園が多いため。保守的な県民性も少しは関係しているかもしれません」と話す。

今回同社が導入したXAIRCRAFT社のP20は、果樹園に対する空中散布用薬剤の登録が進めば、県をはじめ全国の果樹農家への導入が一気に進む可能性がある機体。この日の説明会では、測量とクラウドに保存したデータを基に、数㌢単位で制御された散布の様子が披露された。手元のタブレットで飛行状況や薬剤の残量、噴射量やバッテリー残量などをリアルタイムで確認しながら自動航行するデモ飛行を見て、参加者たちは今後の農業の新たな形に期待を寄せた。

一方で、「ミカンの木は葉裏に薬剤を散布することが重要。上からの散布できちんと葉裏に届くのか」「初期投資にどれくらいかかるのか」など質問も多く飛び交い、今後の課題についても話し合われた。

同市の山東地区から親子で参加した山本農園の山本達弥さん(57)は「ミカン畑は山の下からホースを引き上げて狭い木と木の間を消毒するので大変。収穫まで月1回のペースで消毒を行うが、1・3㌶の畑を消毒するのに息子と2人で3日かかる。ドローンだと1㌶15分で散布できると説明を聞いた。残る課題がクリアされればぜひ前向きに検討してみたい」と話した。

息子の康平さん(27)は「農園を営む奥須佐地区には農家が30軒ありましたが、高齢化で跡継ぎがなく今はうち1軒に。地域の皆さんから委ねられた田畑を守っていきたいとは思うが、作業負担など難しいのが現実。ドローンなどの新しい技術やスマート農業をうまく取り入れながら、これからも地域の風景を守っていきたい」と農業の未来を模索した。

県やJAなどもドローン導入に関して前向きに取り組んでおり、資金面などでの援助も視野に検討を進めている。ドローンに関する問い合わせは同社(℡073・445・2410、℡080・4015・9556)。

ドローンの説明をする藤戸代表㊥と参加者ら

ドローンの説明をする藤戸代表㊥と参加者ら

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