市高野球部の応援30年 理容店営む中本さん

第91回選抜高校野球大会初日の23日、市立和歌山が開幕戦でサヨナラ勝ちし、春の甲子園では14年ぶりの勝利の校歌を響かせた。和歌山市六十谷にある同校近くで理容店を営みながら30年以上にわたり野球部を応援してきた元高校球児の中本伸一さん(66)は「追い付かれても勝利を信じて疑わなかった。市高の野球はレベルが上がっている。次も勝てる」とさらなる躍進に期待を寄せている。

中本さんは幼い頃から野球が大好き。新宮高野球部で二塁や遊撃を守り、当時和歌山県内で圧倒的な強さを誇った箕島高を倒して甲子園に行こうと練習に励んだ。

箕島が1970年の選抜を制した原動力となり、アイドル級の人気だった超高校級左腕の島本講平さんとは練習試合で対戦。直球を狙い打ちし安打を放った。「どの球種もレベルが高く、すごい投手だった。打った後はファンの人から『何で島本君から打つんだ』と言われましたね」と青春の思い出を振り返る。

左膝を痛めて野球を断念し、理容師だった叔父に憧れ、同じ道へ。市和歌山商(当時)から徒歩1分の現在の場所に「カットハウス中本」を開いた。市和商と練習試合をするために強豪校のバスが店の前を通るのを見て興味を持ち、試合や練習を見に行くようになった。

同校を20年以上率いた真鍋忠嗣前監督とは、散髪に訪れたことがきっかけで、野球談義を交わしたり共に釣りへ出掛けたりするようになった。現在は仕事の合間に年間10試合程度を観戦し、グラウンドに顔を出した際は選手に助言を送ることもある。甥も同校野球部に在籍した。

甲子園で勝利を挙げた現在のチームには「投手に力があり、失点を計算できるのは大きい」と期待する。23日の呉戦で7回途中まで無安打投球を見せた岩本真之介投手については「左であれだけの投手は貴重。このまま成長すれば和歌山一の投手になるのでは」と話す。

半田真一監督のことは高校時代から知っており、「とにかく足が速く、勝負に対して勝ち気な性格だった。コーチ時代は真鍋さんに叱られながらよく勉強していた」と振り返る。部員とは、近所のコンビニエンスストアで会った際なども話をするという。

初戦を突破した市高は28日の第2試合で高松商(香川)と対戦する。中本さんは春日部共栄(埼玉)との初戦で好投手の村田賢一から8点を奪った高松商の打力を警戒し、「各打者が大振りせず逆方向に打つ意識が高く、投手も簡単には崩れない」と見る。

呉戦で11安打を放ちながら3得点にとどまった市高打線の爆発に期待し、「初戦は中軸の振りが大きく、打ち上げてしまっていた。市高の野球はレベルが上がっている。打線が力を発揮すれば次も勝てると思う」と力を込める。次戦も店のテレビの前でチームを応援する。

店で大会ガイドブックを眺める中本さん

店で大会ガイドブックを眺める中本さん

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