豊かなモノクロ 保井さん初フィルム写真展

和歌山県和歌山市和歌浦中の保井元吾さん(54)初の写真展「アイルランド放浪記」が5月5日まで、同市古屋のティーズカフェで開かれている。デジタル写真が主流となった昨今、会場に並ぶのは、フィルムカメラで撮影し暗室で手焼きプリントした写真。保井さんは「モノクロの豊かな階調や、立体感のある仕上がりを楽しんでもらえれば。いっそ写真をするなら、あえて面倒なことをするのも楽しいですよ」と話している。

保井さんは写真好きだった祖父から受け継いだ、ライカやハッセルブラッドなど戦前のカメラを使い、日常のスナップや景色をフィルムで写し撮ってきた。

写真の奥深さを知ったのは、地元和歌浦の写真家・松原時夫さんとの出会いが大きいという。松原さんのフィルムの黒白の豊かな階調に強く心引かれ、きめ細やかな描写を追い求めてきた。

5、6年前に松原さんから暗室機材一式を譲り受けてからは、自家現像やプリントを開始。友人たちが集まる〝秘密基地〟に設けた暗室で初めて挑戦し、焼き付けた画像が浮かび上がってきたときの感激は、今も鮮明。「その日から、面白くて寝ずに写真を焼いていました。今も、暗室での作業は毎回新鮮な思いです」とほほ笑む。

今展では、2012年に友人と旅したアイルランドで撮影したスナップなど、モノクロ写真24点を展示。作品は濃霧の田舎道や、そこで出合った牛たち、海に切り立つ自然の絶景「モハーの断崖」、アイリッシュパブが建ち並ぶ街の風景など。印画紙にもこだわり、旅先で感じた空気や思いまでも丁寧に焼き付けてきた。

アイルランドはウイスキー発祥の地といわれ、ビールも有名。保井さんもお酒好きで、まちかどで出会ったほろ酔いの男性たちと、ハーモニカでセッションした時に撮った陽気な雰囲気が伝わる一枚もある。

満足のいく一枚を完成させるには失敗も多いが、保井さんは「焼き加減一つで、全く別の写真になる。一枚のネガから、同じプリントは二度とできないのが大きな魅力。一生続けられる趣味になりそうです」と笑顔で話している。

同カフェは毎週月・火、第4日曜が休み。午前11時から午後5時(金曜日は7時)まで。

問い合わせは同カフェ(℡073・460・4715)。

フィルムならではの重厚な作品が並ぶ会場で

フィルムならではの重厚な作品が並ぶ会場で

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