■2002石田真敏
去る十月二十三日、自民党本部七〇一号室の入り口には「国会議員以外の方は入室できません。」との異例の張り紙がなされていました。
竹中不良債権処理案が、二十二日の中間報告発表予定を前にして、自民党幹部会でストップをかけられたあと、自民党政務調査会の財政金融部会で説明及び意見交換のために竹中平蔵大臣が出席されることとなっており、何台ものTVカメラが並び、部会は開会前から異様な雰囲気に包まれていました。
五十人ほどの国会議員が出席する中、一時間二十分にわたって、十数人の議員から竹中案に対する批判や意見が飛び交いました。非常に専門的な意見交換の場でもありました。
そして、この議論の中で、十月三十日に発表された不良債権処理対策並びに総合デフレ対策の大枠について考え方が出尽くしたと思います。
この後三十日までの数日間にさまざまな意見集約がなされ、政府としての対策が発表されたところであります。
さて、これについての評価は、大きく分かれていますが、私はまずまずの対策となったのではないかと思います。当面の課題はデフレがより一層不良債権を生み、不良債権がより一層デフレを生むという悪循環を断ち切るために不良債権処理を行い、同時にその影響を少なくするために、補正予算や税制改革、雇用や中小企業対策などあらゆる対策を総合的に実施することだと思います。
しかしこれで景気が回復するかというと必ずしもそうとは言えないと思います。
現在が、明治維新、第二次大戦後に続く第三の大改革期といわれるゆえんは、少子高齢化、国際化、情報化、さらには地球環境保全、女性の社会参加等々社会の基本条件が大変化しているからです。しかし、現在ではこの変化に社会的にも経済的にもまだまだ対応出来ていません。これらに一刻も早く対応しなければ、安定的発展は望めないと思います。
例えば、就業者数の比率を欧米と比較してみますと、第二次、第三次産業就業者率は、それぞれ約一〇%の差があります。このことは今後の傾向として日本では第二次産業から第三次産業へ数百万人が移動することを意味します。つまり中国の工業化やITの展開などの変化に伴って産業構造の人変化が起こると考えられます。
ただ、この不景気にも一年間に一兆円以上成長した産業があります。その一つは高齢化に対応した介護事業、二つ目は環境保全に対応した環境(エコ)産業、三つ目は女性の社会参加などのライフスタイルの変化に対応した中食(惣菜)産業、そして四つ目と五つ目は、情報化に対応したソフト産業とハード産業です。
このように、もう既に変化に対応した産業もありますが、いまだ日本全体としては緒についたばかりです。
国民が、そして企業が、各々この変化にどう対応してゆくか足元を見つめ直し、方向を見定めてゆかなければならない時だと思います。
従来のまま、ただ景気回復を待っていても決して改善されることはなく、気付いた時には社会が大きく変化したことに驚くことになるのではないでしょうか。
時代の趨勢をしっかり見極め、誤りなく活動をしてゆかねばならないと思っております。
(2002石田真敏)
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