■2003谷本龍哉
皆さんは、「地上波放送のデジタル化計画」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「地上波放送というのは、皆さんが普段見ている一般のテレビ放送のことで、現在この放送は、「アナログ波」で送信されている。
二〇〇一年の電波法の改正により、この「アナログ放送」に対して、二〇〇三年(今年)に三大都市圏(東京・名古屋・大阪)で、二〇〇六年には全国で「デジタル放送」を平行して開始し、二〇一一年七月二十四日には「アナログ放送」を全面的に停止し「デジタル放送」と入れ替えるという計画である。この計画は既に法律で実行することが決定されている。
では「アナログ放送」を停止すると何が起こるか。一番簡単なことは、あなたが今見ているテレビが映らなくなるということである。二〇一一年は八年後なので、それまでに買い替えればいいと思われるかもしれないが、現時点で「地上波デジタル対応」のテレビは一台も売られていない。今年中に売り出される予定ではあるが高額であり、平行してアナログテレビも売り続けられる。また、現在売られている「BSデジタル対応」や「CSデジタル対応」のテレビも、「地上波デジタル」は受信できない。
つまり今日本に存在する約一億台のテレビと、今後も売られ続ける「アナログテレビ」のすへてが二〇一一年で使えなくなるということである。すべての国民は、テレビを見るために「デジタルテレビ」に買い替えなくてはならなくなる。
そして一番の問題は、こういう計画が既に実行に移されていることを、ほとんどの国民が和らないことである。民間調査機関の調べでは、この計画を知っているのは国民全体のわずか十一%に過ぎない。
この「地上波放送デジタル化計画」は、ほかにもたくさんの問題点を抱えている。デジタル化のための放送業界の莫大な投資費用(一兆円)、難視聴地域対策、アナログ・アナログ変換費用(混信対策一八〇〇億円)等々である。
私も総務委員会において、度々この問題について質問に立った。法律制定時には分からなかった多くの問題点を指摘し、日本に先行してデジタル化を行いさまざまな困難に直面している海外の事例を指摘し、国民認和度が低い中でのテレビの強制買い替えの困難さを指摘してきた。しかし、この国では、一度決まったことを変更することには、非常に大きな抵抗が存在する。
勘違いされては困るのだが、「地上波放送のデジタル化」そのものに反対しているわけではない。今回の計画が余りにもずさんであり、このままでは必ず失敗して、国民に迷惑をかけ、無駄な税金が使われると思うから、計画を練り直せと言っているのである。
「地上波放送デジタル化計画」を一時凍結したところで、国民は誰も困らない。急ぐ必要はどこにもないのである。「朝令暮改」と言わわようとも、間違いが分かればすぐに改める姿勢が大事だと考えている。
(2003谷本龍哉)
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