■2003谷本龍哉
自民党の中に、「e-japan重点計画特命委員会」という委員会がある。この委員会は、日本のIT政策のすべてについて議論し、自民党としての考え方を決めていく場所である。そしてその中に、「戦略強化チーム」というものが作られている。
メンバーは若手議員ばかり七人。座長だけが当選二回の議員で、あとの六人は、私を含め当選一回の議員ばかりである。では、この「戦略強化チーム」は、何をしているのか。特命委員会で議論された特に重要な問題について、事実関係を突き詰め、改善策を提示し、各省庁にそれを実行させる。いわば実務部隊である。
しばらく前まで、日本の政治の世界では、当選一回の議員が政策立案に関して主導権を握るということは、ほとんど考えられなかった。それが今確実に変わりつつある。
この「戦略強化チーム」の会合は毎週一回開催され、すべての省庁の担当者が必ず出席しなければならない。我々がその場所で指摘したこと、質問したこと、改善を促したことについては、次回の会合までに各省庁が説得力ある答えを必ず持ってこなければならない。
それぞれのメンバーは、決して誰かベテラン議員のひも付きではなく、自分の考えで自分の意見を言う。そしてそこで出た結果が、自民党の政策となり、国の政策となる。
正直なところ、なぜこのようなことが可能になったのか、「戦略強化チーム」のメンバー同士でも良く分かっていない。もちろん、このチームを作ることについては、我々が提案したのだが、我々の予想を超えた状況に、いつの間にかなっていたという感じである。ただ、この情報通信という分野については、深く精通した既存の政治家がほとんどいないということが、若手の我々だけでここまでできる理由の一つかもしれない。
現在「戦略強化チーム」は、IT予算の陰に隠れた無駄遣いについて、徹底酌な調査をしている。特に、「レガシー・システム」と呼ばれる、国が抱える旧(ふる)くて巨大な情報通信システムについてメスを入れている。対象となるシステムは四十一システムも存在し、その維持運営のためだけに年間七千億円もの税金が使われている。しかもなぜそれだけかかるのか、今まで一度も検証されたことがない。我々の試算では、少なく見積もっても半分は削減できると考え、各システムの検証を行っている。
特に問題があるものについては、かなり厳しいやり取りが毎回繰り返される。官僚サイドからは、「この戦略強化チームはいつまで続くのか」という悲鳴に近い声が上がっているという話も聞こえてくる。しかし我々は、騒ぐだけ騒いであとは知らないというような仕事をするつもりはない。改善可能性調査の内容、改善計画、実際の改善とそれぞれの段階で厳しくチェックをしていくつもりである。IT分野に限らず、旧(ふる)いシステムの中には、まだまだ無駄遣いが潜んでいる。
(2003谷本龍哉)
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