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2003年12月16日

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自衛隊は安全な所だけ? 外交官は危険でもいい?
5_5.gif ■2003谷本龍哉

 イラクにおいて、日本人外交官が殺害された事件は、非常に残念で痛ましいことである。治安が極めて悪化している中で、外交官としての職務に全力で取り組まれた姿勢に深い敬意を表するとともに、そういう活動を標的にした「テロ行為」に対して、言い表しがたい憤りを感じている。
 奥克彦大使は、イラクに赴任する直前、森喜朗前総理に会い、次のように述べられたそうである。「今、ヨーロッパにいる外交官の中で、イラクに行けるのは自分だけだと思う。国連中心の復興支援を主張する人がいるが、現場を知る者としては、国連任せでは無理だと考えている。やる気のある国が中心になって取り組むことが大事だ」。
 また、外務省や友人に宛てたメールの中でこうも言っている。「イラクの子どもたちの瞳を見ていると、少しでも何とかしてあげたいという気持ちが強くなる。そして彼らが成長した時に、日本という国に感謝の気持ちを持ってもらえれば」。
 奥大使と親交があったイギリス在住の評論家マークス寿子さんは、新聞紙上で次のように述べられた。「自衛隊派遣で危険かどうかが議論されているが、それでは、訓練を受けた自衛隊員も派遣できない所に外交官を平気で送っていることになる。外交官は死亡しても自衛隊員はけがすらしてもいけないというのはおかしい。外交官を派遣する時点で自衛隊の護衛をつけるのが筋だった」。
 外交官は危険な所にも出すが、自衛隊は安全な所にしか出せないという議論は、よく考えてみれば非常に奇妙な議論である。自衛隊は本来、危険な任務を行うために、巨額の税金を費やして装備を整え、訓練をしているのである。「自衛隊は安全な所だけ」という本末転倒な考え方が出てくるのは、日本が「自衛隊」そのものの位置付けをごまかし続けてきたことのつけである。
 自衛隊が軍隊であること、そしてその主任務には、①自衛のための戦争②大規模災害時の救助活動③国際貢献の三つである。このように明確に決めていれば、自衛隊を出すか出さないかという議論はあったとしても、「安全かどうか」などという議論は出なかったはずである。
 世界中には、紛争が絶えず、治安が悪く、人道復興支援を必要としている国がたくさんある。そしてその支援を前へ進めていくためには、軍隊による治安の維持と文民による復興支援は車の両輪である。どちらが欠けてもその活動は成功しない。
 日本が国際社会において発言力を失い、エネルギー問題や貿易問題についても不利な扱いを受け、国際紛争が起こっても他国に助けを求めず、経済も今以上に縮小することを覚悟してでも、国際貢献には参加しないという決断をするのであれば、それも一つの道である。
 しかし、今まで通り石油を消費し、今まで通りの生活水準を維持し、国防体制の一部を他国に依存し、経済の立て直しにも取り組むというのであれば、国際貢献は、危険が伴う任務であっても避けては通れない。いいとこ取りはできないのである。
 日本は長年ごまかし続けてきた「自衛隊」の位置付けを、明確に決め直さなければならない時期に来ている。


(2003谷本龍哉)
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