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2004年05月03日

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19兆円の請求書止まらない核燃料サイクル
5_5.gif ■2004谷本龍哉

 現在、 莫大な国民負担を伴うプロジェクトが、 国民的議論がないままに進行しようとしている。 プロジェクトの名前は 「核燃料サイクル」。 その内容を簡単に言えば、 原子力発電の原料であるウランのリサイクルである。
  「核燃料サイクル構想」 は、 一九五六年の原子力長期計画から登場した。 二度の石油危機を経て、 石油から原子力への転換が行なわれる中で、 核燃料をリサイクルすることで半永久的に原子力発電を継続できる 「夢のエネルギー」 として構想が進められた。
  「核燃料サイクル」 は、 2つのシステムから成り立っている。 一つは、 「高速増殖炉サイクル」 と呼ばれるもので、 燃料の利用効率は約60倍。 つまり、 使用済み燃料から元の60倍のリサイクル燃料を得ることができる。 まさに夢のエネルギーである。
 もう一つは、 「軽水炉サイクル (プルサーマル)」 と呼ばれるもので、 燃料の利用効率は約1・1倍。 元の燃料の1割だけリサイクルできるという補助的なものである。
 当然、 「核燃料サイクル」 の中心は、 「高速増殖炉サイクル」 であったが、 一九九五年に高速増殖炉 「もんじゅ」 が事故を起こし、 実用化の目途が立たなくなってしまった。 そこで 「核燃料サイクル」 推進派は、 本来補助的な役割だった 「軽水炉サイクル」 を、 いつの間にか主役に据えてしまったのである。
 補助的なシステムを主役に据えてでも、 強引に計画を進めようとするのには理由がある。 核燃料をリサイクルするためには、 使用済み燃料を再処理する必要があり、 その 「再処理工場」 をすでに青森県の六ヶ所村に作ってしまっていたのである。 しかも、 この工場の建設費は、 当初六千九百億円とされていたが、 最終的に二兆二千億円もかかってしまった。 おそらく地球上で最も高額な建築物であろう。
 このような流れの中で、 今年一月二十三日、 電気事業分科会において、 このプロジェクトに対する国民負担の額が初めて報告された。 その額は、 運営費、 最終処理費を含めてなんと十八兆八千億円。 国民一人当たり約十九万円の負担である。 これまでの経緯 (再処理工場六千八百億↓二兆二千億) を考えれば、 この負担額は実際にはまだまだ増える可能性もある。 これだけの国民負担をさせてまで、 本来主役でない 「軽水炉サイクル」 を推し進める必要があるのどうか。 私は、 大きな疑問をもっている。
 昨年、 米国のマサチューセッツ工科大学、 ハーバード大学が 「核燃サイクル」 について、 相次いで報告書を発表した。 どちらも、 「研究が進み、 安いウラン資源の長期的な調達が見通せるようになった現在、 再処理によるリサイクルの意義は失われている」 という結論であった。 しかし、 推進派は、 こういったマイナスの情報には一切耳を貸さず、 「一度決めたことだから」 という、 今まで何度も失敗してきた論法で 「核燃料サイクル」 を進めようとしている。
 国民に莫大な負担を強いる政策だけに、 今一度立ち止まり、 国民に見えるところで十分な議論をするべきだと、 私は考えている。


(2004谷本龍哉)
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