■2004西博義
このたび、 厚生労働副大臣の重責を担うことになった。
年金、 医療、 介護など皆さんの生活に密接に関係する行政を担当するだけに、 生活者の目線に立って全力で与えられた職務を全うしたいと決意している。
先月十五日、 厚生労働省は、 BSE対策の見直しを食品安全委員会に諮問し、 現在、 国会でも議論されている。
BSEを発症した牛が日本で初めて見つかってから三年が経過した。
牛肉が店頭から姿を消し、 大きな社会問題となった。
大手チェーン店の牛丼を懐かしがる声も多い。
「BSE (牛海綿状脳症)」 は、 細胞たんぱくが異常化し、 牛の脳がスポンジ状に変化する悪性の中枢神経系の病気で、 病気にかかると牛が立てなくなったりする。
世界二十三カ国で約十九万頭の牛に発生しているが、 その内97%は英国で発生している。 日本では現在まで十四頭が確認された。
英国で約十五年前から起こったこの病気は、 牛の肉をさばいた残りを加工 (肉骨粉) して餌として混ぜたことが原因となった。
BSEが怖いのは、 感染した牛を食べた人に変異型クロイツフェルト・ヤコブ病にかかる人が現れるからである。 英国では百四十七人の患者が出ている。
この病気は、 人間の脳にもスポンジ状の空胞ができ、 知覚障害や歩行困難などの症状があらわれる。
日本では最初のBSE発生後すぐに、 ①肉にする牛は全部BSEの検査をする ②脳やせき髄など危険な部分はすべて取り除く ③肉骨粉は餌として使用しない―など対策が取られている。
これまで、 世界的に見て、 生後二十カ月より若い牛にはBSEが発症していないことから、 今回、 二十カ月より若い牛をBSEの検査対象から外すことが食品安全委員会に諮問されたのである。
日本でも、 発生後からこの三年間で三百六十万頭が検査されたが、 生後二十カ月より若い牛でBSEは見つかっていない。
検査体制の変更は国際関係にも影響が及ぶ。 食品安全委員会への諮問に沿って、 日米の担当者間で輸入再開に関する協議が開始された。
私も担当者と緊密に連携を取りながら協議を見守っている。
日本側としては、 あくまでも国産牛肉と同じ安全性が確保される条件を求め、 アメリカ側の提案が出れば、 その内容について食品安全委員会の評価を求めることにしている。
最近の研究では、 異常なたんぱくは、 大部分が脳やせき髄に徐々に蓄積されることが分かっている。
これら脳などの危険な部分をいかに除去するかということがもう一つの重要な課題となっている。
危険部分の除去が徹底されるように、 屠(と)畜場において実施状況を検証できる体制を整備しなければならない。 それまでの間、 すべての牛の検査は続けることになる。
したがって、 食品安全委員会で生後二十カ月以下の牛を検査対象外とする結論が出てもすぐに生後二十カ月以下の牛の検査をやめるということではない。
国民の理解を得られるよう十分な周知期間も必要である。
国民の健康を守る上で、 安全な食品を消費者に届けることは、 最も大切なことの一つである。 科学的な知見を踏まえながら、 安心して召し上がっていただける食品を食卓に届けられるよう責任ある対応をしたい。
(2004西博義)
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