■2005鶴保庸介
「こりゃあすごい」 その光景を見て思わずため息を漏らしてしまった。
自民党水産部会長として、 現場を見ずして水産は語れないとの思いから軽い気持ちで国会議員数人と三浦半島の先っぽにある三崎漁港視察に参加したときのことである。
ヒラメが、 ブリが、 ハマチが、 ベルトコンベヤーにのって次々と自動的にさばかれていくのである。 ピチピチと生きている魚をギロチンのような刃物を持った工作機が頭を切り、尾を切る。 二枚に、 三枚に、 スイッチ一つでおろし方まで調節のきく機械があると思えば、 自動的にブラシの回った機械でうろこを落とす。 最後は真空パックの切り身が次々と氷詰めの容器に入れられてさあどうぞという仕組みだ。 魚の加工処理場はたくさんあるがここまで自動かつ衛生管理の行き届いた施設は日本でもまだまだ少ないという。 消費者がそれを求めているというが少しやりすぎなんじゃない?
で、本論はここから。 そう、 その施設が問題なのである。 結論から言おう。 これは三重県漁連が神奈川県の三浦半島に立てた魚処理工場なのである。 じゃじゃーん、 と頭にどらがなった人はかなり水産を分かっている方(?)。
説明すると、 ①県漁連でここまでの施設を作る体力、 と情報力のあるところはほとんどない②三重県が消費地に近い神奈川県を選んで作っている③三崎漁港といえば特定第三種漁港というたいそうな漁港で愛媛丸はここを出てハワイに事故にあったのである。
何を言いたいかお分かりであろう。 なんで三重県なんだ!どうして和歌山はできないんだ!。 結局うらみぶしなのである。
しかしこれは県内の皆さんも同じ思いを共有してもらわねばならない。 海産物を見て三重と和歌山では大きくは変わらない。 むしろ、 加太や有田のように瀬戸の海の恵みが取れるという意味では三重よりわが方が有利とさえいえるのである。
私は従来、 一次産品の成功の鍵は消費地 (マーケット) の情報をいかに的確かつ早くキャッチし、 それをフィードバックすることができるかにかかっていると主張してきた。 高値で売れないものをたくさんつくった (とった) ところで儲けは少ない。 どのタイミングでどのような形、 品質のものがどういう層に受けるかという情報さえ誤らなければ食料というものは確実にそのような情報を持たない産地食料を駆逐するのである。 そういう意味では東京という日本一の消費地の目と鼻の先にこのような加工場をつくった三重県漁連の戦略に拍手を送りたいと思うし、 ここまで差があることを認識し、 われわれは改革を急がねばならないと思うのである。
「漁業をめぐる状況は大変厳しいものがあります」 と何回言葉にしてもそれで漁村の暮らしがよくなる、 魅力ある漁村に変わるはずがない。 要は戦略と行動である。
多くの県内漁業関係者に聞いてみると、 いよいよ待ったなしの状況になってきたと思っている。 あえて批判を覚悟で申し上げます。 「それじゃあ、 なぜ行動を起こさないのですか。」 ここらで漁協の合併を進めませんか (漁協のコスト削減)。 産地直販所をつくりませんか (流通改革)。 消費地に和歌山産の何々というPRに飛び出しませんか (ブランド化)。 マリーナ事業だって有望です (現存資源の有効活用)。 そしてこれらのことをバラバラにではなく、 やる気のある漁業者を集めて検討するのです。
「漁師」。 先祖にその血がながれている私には、 この言葉には男らしい冒険心がある、 と信じています。 みみっちい漁業権を争うだけの存在では決してない。
ハマの心意気、 を見せるときはまさに今この難局にあるのだと肝に銘じて、 私もお手伝いをさせていただきたい。 がんばります、 いやがんばってます。
(2005鶴保庸介)
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