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f_ss_nikai.jpg 二階 俊博
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2005年03月23日

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「混合診療」まず安全性の確保 華岡青洲の精神受け継ぎ
5_5.gif ■2005西博義

 一月下旬から今月初旬にかけて、 ドラマ 『華岡青洲の妻』 が放映された。 原作者は、 地元出身・有吉佐和子さんである。
 青洲の母・於継に田中好子、 妻・加恵に和久井映見と人気女優を配したことも話題となった。
 青年医学者・青洲のためにすべてを捧げようと競う嫁姑の心の葛藤を描いた物語であるが、 二人を実験台にしても麻酔による乳がん手術の成功に賭ける青洲の執念に感動した。
 ドラマでは、 麻酔薬の人体実験をどうするか、 青洲の苦悩も描かれている。
 青洲が加恵の失明という犠牲のうえに完成した全身麻酔薬 「通仙散」 を用いて世界初の乳がん手術を成功させたのは、 今から二百年前のことであった。
 今でこそ当然であるが、 当時、 世界のどこにも 「実験・治験」 という概念が存在しなかった時代に、 青洲は、 薬の開発に 「実験」 を導入した。
 二十年もの歳月をかけて実験を繰り返し、 ひとりで麻酔薬を完成させた青洲は、 世界の最先端をいく研究者であった。
 青洲の名声は日本中に聞こえ、 その弟子は青洲存命中に約一千人、 没後三十年に一千人を数えたという。
 青洲の麻酔術は門下生以外には門外不出といわれ、 普及しなかったとされてきたが、 解体新書で有名な杉田玄白の一門に伝えられ、 江戸でも乳がん手術が行われていたことを示す資料が、 昨年秋、 東京の古書店で発見された。
 門外不出とされたのは、 中途半端な知識で手術することで、 生じる患者の危険を避けるためであったといわれている。
 さて、 小泉内閣が進める構造改革の中で、 いわゆる 「混合診療」 問題が大きな課題になった。
 最近は国民の医療に関する知識が高く、 がん治療などでは、 国内ではまだ承認されていない薬の使用や、 身近な医療機関で高度先進医療の実施を求める患者の切実な声も多い。
 現在、 混合診療が認められていないために、 治療の一部に国内未承認薬を使用した場合には、 本来保険が適用される分まで患者負担となる。
 また、 高度先進医療を行える医療機関が限定されているという問題がある。
 厚生労働省では、 保険診療と保険外診療を併用して患者の負担を軽減する 「混合診療」 を認める方針を固めた。
 まず、 欧米で承認されている抗がん剤を臨床試験で使用する場合など、 混合診療の対象を広げる。
 さらに、 舌がん摘出後の形成手術など約百技術が混合診療の対象となり、 約二千の医療機関で実施されると見込まれる。
 また、 小規模医療機関でも一定の医療水準を満たせば届出によって先進的な医療が施せるようになる。
 この結果、 患者負担が軽減され、 身近な医療機関で先進的な医療を受ける機会が増えることになる。
 しかし、 「混合診療」 問題では、 あくまで国民の安全性を確保するという大前提を忘れてはならない。
 医聖 「華岡青洲」 が実践した、 着実な治験の積み重ねにより、 有効で安全な医療技術を確立し、 人々の命を救うという精神は、 現在に生きている。
 一人でも多くの国民が、 安心で満足のいく医療を受けられる体制を確立するために力を尽くしたい。


(2005西博義)
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