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2005年05月10日

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「未来志向型」教育を 日中のよりよい関係目指して
5_5.gif ■2005鶴保庸介

 今テレビをつけると、 政治の関心はホリエモン、 JRの問題を除けば、 郵政事業民営化か中国問題である。
 郵政はともかく、 中国問題はやはり。 という感慨を禁じえない。 今から四年前の総理所信表明演説に対する本会議代表質問で、 中国の教育問題を取り上げたからである。 なぜ日本の歴史教科書の問題が中国の批判の的になっているのに、 日本政府は中国の教科書の問題を取り上げないのか、 というのがその趣旨であった。 日本の教育においては戦後史というのはほとんど取り上げられないが、 中国の歴史教科書を見ると、 日本の十倍はボリュームのある近代史教育がなされているのである。 しかもその内容はほとんどが日本の侵略に対する防衛を強調した中国共産党のレジティマシーを強調するものばかりなのである。
 本会議代表質問の性格上、 ボリュームをさいての質問はできなかったが、 若手政治家としての想いをこめたものであった。 両国の関係を築くのは両国国民であり、 お互いが相互の立場を理解できない極端な教育を受けているとしたら、 果たして本当にこのままで両国のいう、 「未来志向」 の関係が築けるのであろうか。 総理答弁(文部科学省答弁)は案の定というか、 期待はずれのものであったが。
 もちろん日本における中国の歴史に関する理解は誤解も多い。 また、 日本の主張がすべて正しいわけではないと疑ってみる謙虚さも必要であろう。
 しかし、 私たちの三十代、 四十代世代において、 戦争というものはいい意味でも悪い意味でも遠い過去のものになりつつあるし、 中国の同世代も同様の感慨を持っているのではないかと思うことが多かった経験を踏まえると、 そろそろ本当の意味での 「未来志向型」 教育を目指すように日本の文部科学省をはじめとする政府が中国政府に対して働きかけをすることがいかに大切か。 今のままでいると、 現体制が崩壊することがない限り、 あと二、 三世代は今のままの日中関係に終始するのではないかと危惧するのである。
 靖国神社、 尖閣列島、 東シナ海の油田開発など、 立場の異なる問題点を解決していくのは容易ではない。 また、 歴史認識なるものに両国の一致点を見つけることは難しいであろう。 現に韓国との間で、 歴史認識を共有するべく発足した両国の協議会には日本側の代表が 「もう二度と委員にはなりたくない」 という感想がもれてくるほど大変な作業である。 また、 教科書の問題は極めて国家の主権的権利に属する問題であり、 これにメスを入れることはやり方を間違えると内政干渉という極めて重大な過ちを犯すことも重々覚悟しなければならない。
 確かに、 そうは言っても、 しかし、 日本が戦後教育のなかではっきりとした立場をとって子弟を教育してきた以上、 その論拠ははっきりしているはずなのであり、(そうでなければ、 政府は取り返しのつかない重大犯罪を犯してきたことになる)その論拠に基づいて中国に対してはっきりとした主張をすべきなのは日本人なら誰しもが望むところではないか。
 多くの日本人識者が言うように 「対話」 を続けることでやがて真の理解にいたるほど外交はあまくはない。 外交は日本人の考える以上に技術的所作であり、 国際的にそう考えて臨む国が多い以上、 両国の間に基本的な信頼関係がなくてはおそらく両国の間に横たわる溝は埋まらない。 それには幼いころから受けてきた教育がいかに重要な意味を持つかは容易に気がつくはずである。
 ことあるごとに中国の政府関係者と熱を帯びた(というより一見喧嘩腰)議論をしている私をなだめるつもりか 「だって共産党だもの。 (そんなこともしらないの)、」 と訳知り顔にいわれる先輩にいいたい。 中国共産党がその正統性を証明すべく、 便宜上反日教育をしている面も多い。 それが分かっているなら便宜上の反論をなぜ日本はしないのか。 日本人の多くはこれをあきらめに似た感情でやり過ごしてきた。 どうせ日本は戦争を覚悟できない国なのだから、 という厭世観が相手国のわが国に関する教育をやりたい放題にさせているとしたら、 教育に限っては大きな問題であり、 それだからこそ、 諸外国はわが国の教育に大きな関心を寄せているのである。
 中国は圧倒的な歴史があるが、 現代の中国共産党はそうした歴史遺産を抹殺して新たな国家を建設してきた。 それが現代中国政権であり、 センチメンタルな日本の中国観は全くといっていいほど伝わっていない。
 私たちの中国に対する 「なぜ」 のすべてはここに発しているのである。


(2005鶴保庸介)
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