■2005西博義
現在、 政府では、 医療費抑制を中心とする社会保障費の伸び率を抑える方策について議論が行われている。
極端な意見としては、 医療費の伸び率を経済成長率に合わせて抑制したらどうかという意見もある。
今後、 高齢者人口の増加が見込まれる中で、 景気が悪いときには医者にかかるのを抑えてもらうというようなことは現実的ではない。
厚生労働省では、 医療費抑制のために、 医療費 「総額」 を機械的に決めるという方法ではなく、 医療費の中身をよく吟味して医療費の適正化を図るべきであり、 さらには、 健康増進策・疾病予防策を積極的に展開していくことが重要であると考えている。
さて、 六月はじめから、 夏の軽装 「クールビズ」 が始まった。 政府では、 地球温暖化の防止運動の一環として、 「クールビズ」 を推進している。
クールビズは軽装で快適だが、 お腹のまわりがちょっと気になるものである。 私の年代では、 よくビール腹などと冷やかされる肥満のほとんどは、 内臓脂肪が原因と考えられる。
先日、 内臓脂肪のたまり具合をウエストサイズで判断する診断基準が新聞等で報道された。
男性は八十五㌢以上、 女性は九十㌢以上だと要注意で、 内臓のまわりに脂肪が蓄積していることが疑われるという。 男性より女性が大きいのは、 皮下脂肪のせいだということだが、 この数値には異論もあり、 今後の専門家の議論を待ちたい。
今、 この 「内臓脂肪」 が、 生活習慣病対策上、 大変注目されている。
生活習慣病の代表は、 ①肥満症②高血圧③糖尿病④高脂血症であるが、 最近の研究では、 これら生活習慣病の犯人は、 内臓脂肪の蓄積であると考えられている。
そして、 これらの症状を重複して発症している状態を 『メタボリック症候群』 と呼び、 この状態の人は、 動脈硬化が進み、 脳血管障害や心臓疾患を発症しやすいという。
このため、 これら四つの症状は、 死の四重奏と言われるほどである。 さらにはガンとの関連性も指摘する専門家もいる。
生活習慣病は、 検診などで指摘されても、 自覚症状がないことが多く、 早期の段階では、 一つ一つの症状が大したことはないと、 つい治療を怠りがちになるが、 いつの間にか私たちの健康を根こそぎむしばんでいる危険性があるのである。
最近、 私は厚生労働省内に 「健康フロンティア戦略プロジェクトチーム」 を立ち上げた。 このプロジェクトの狙いは、 生活習慣病対策を国民運動として本格的に展開しようとするものである。
健康診断の受診率を高めて、 一人一人が自分の健康管理に普段から注意することを促すとともに、 運動の指導、 食生活の改善、 禁煙の推進など、 地道な取り組みの大切さを訴えていかなければならないと考えている。
どこが検診を行うか、 費用の負担をどうするか、 生活習慣の改善をどう支援するか、 医療機関とどう連携するかなど、 課題は多い。
医療費の伸びを抑えるため、 経済成長に関連させて抑制することを目標とするのではなく、 生活習慣を改善して、 医療に頼らない健康な社会を築くことが目標でありたい。
『一に運動、 二に食事、 しっかり禁煙、 五にクスリ』 を合言葉に、 健康で元気な日本を目指したい。
(2005西博義)
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