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f_ss_tsuruho.jpg 鶴保 庸介
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2005年12月27日

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お役所仕事に“喝” 漁業者救済へ燃油高騰対策通す
5_5.gif ■2005鶴保庸介

  「ああ神様、 俺は何様ですか?」 とはウルフルズの歌である。
 最近は役所の方々と衝突することが多い。 構造変化が進み、 コペルニクス的発想の転換が求められる時代にあって先例主義や安定主義を原則とする 「お役所」 とは根本的に決別をしていかなければならないから、 当然といえば当然の帰結ではある。 しかし役所の職員一人一人はとても優秀な上、 私ども国会議員と対峙するクラスの職員ともなると個人的には一回りも二回りも歳の差があるのが常であるから、 この方々にこれをせい、 あれをせいというのは大変なプレッシャーを感じさせることになる。
 しかしあえて言わねばならない。 漁業経営体質強化緊急総合対策基金もこうしたプレッシャーを乗り越えて創設することになった代物である。
 漁業経営体質強化緊急総合対策基金は、 有名な大型クラゲの来遊や、 燃油の歴史的な高騰によって、 壊滅的な打撃を受けている漁業者を救うための緊急予算措置のことである(少し詳述すると、 このたび補正予算により、 五十一億円で策定されることとなりました。 おおむね大型クラゲ対策が十五億円。 燃油流通効率化対策が十億円。 協業化による省エネ対策が二十五億円となっています。 合わせて、 平成十七年度予算で出ておりました燃油対策および経営体質強化対策が、 使い勝手が悪いとの指摘を受けて、 条件改善をされることなりました。 で、 この総予算は四十九億円ほどになります。 都合、 補正の分と合わせて約百億円の対策となる予定です)。
 勘の鋭い読者はお気づきだと思うが、 これはもうゴリゴリの俗的予算措置。 おそらく今流行の市場主義全能主義者が聞いたら卒倒しそうな伝家の宝刀である。
 ではなぜ、 バリバリの改革派(自称)である小生がこれを強く推し進めてきたか。
 以前この稿でもお話しした通り、 漁業を取り巻く環境は厳しいなんて生易しいものではない。 県内平均年収はなんと二百万円を切っているという状況であった。 そこへ燃油の高騰と大型クラゲ。 和歌山では今のところまだそれほどクラゲによる被害は出ていないが、 中国、 東シナ海から来遊するクラゲの数は年を追うごとに増えており、 房総沖にまで来遊が確認されるまでになっている。 来年には紀伊半島周辺で被害報告が出てくるだろう。 また、 かつて日本のマグロ供給基地であった県内の遠洋マグロ漁船は現在わずかに二隻ほどしかなく、 これらが近年の燃油高騰によって廃業を検討し始めている。 沿岸漁業でも漁船漁業なら燃油を使わずにいられない。 先日ある漁協で聞いたところ、 三カ月で十万円ほどの儲けしかなかった、 というところも出ている。 これでは生活保護をうけながら漁に出るということになってしまう。
 大変だ、 大変だ、 というだけでは政治は動かない。 役所は建前を前面に打ち立てて、 できませんを連発する。 まさか 「同情するなら金をくれ」 という漁業者の言う通りにすることはないにしても何とか方策はないものか。 燃油高騰のための会議を何度開いてもラチがあかない。 水産議員は何をしているのかという同僚国会議員の声、 声、 声。 部会長たる私にとっては神経質にならざるを得ない日々であった。
 そんな時冒頭のような 「事件」 がおこったのである。
 ある日、 一刻の猶予もならぬから、 不完全ではあるが、 たたき台のつもりで燃油高騰対策を会議に図ることにした。 唐突に出てきた案に驚いた役所がまた 「できません攻撃」 で攻めてきたのである。 ○○さん、 理屈は素晴らしい。 その通り、 ではどうやって漁業者を救うんだ?構造改革なんて悠長なことをいっていると漁業者はいなくなるよ。 日本の漁業がなくなったら外国の船が世界の海を席巻する。 漁船の造船技術だってだんだんと後退が指摘されている。 批判するのは勝手だけど、 別の方策があるのか?いってみろ!時は急を要するんでぃ!
 気がついたら周りはしんと静まり返ってこちらを見ている。 目の前にはやや青ざめた顔で水産庁の職員がこちらをうかがっていた。 どこからが現実の声だったか定かではないが、 最後の怒鳴り声だけはみなの耳にはいってしまったようである。 後悔しても遅い。 「部会長!良くぞいってくれた!」、 なんて声も上がる雰囲気のなか、 補正予算案提出を既定路線にしてしまったのである。
 ただ、 断っておくが、 ものの弾みでできたような予算ではない。 卑しくも国民の大切な税金を使わせていただく補正措置である(十八年度概算要求にも反映されているが)。 その後も水産庁の方々とみっちりと 「お勉強」 させていただきしっかりとしたものに仕上がった。
 その後、 予算の折衝には水産庁をはじめ多くの同僚先輩議員の先生方のひとかたならぬお世話になった。 水産部会長職を離れることになったこともあり、 この補正措置を通じて漁業関係の皆さんが少しでも元気になられることを心の底から期待してやまない。


(2005鶴保庸介)
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