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f_ss_nikai.jpg 二階 俊博
f_ss_nishi.jpg 西 博義
f_ss_ishida.jpg 石田 真敏
f_ss_tsuruho.jpg 鶴保 庸介
f_ss_sekou.jpg 世耕 弘成
f_ss_ooe.jpg 大江 康弘
f_ss_kishimoto.jpg 岸本 周平
f_ss_sakaguchi.jpg 阪口 直人
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2006年02月14日

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多様な個性の花を咲かそう 生徒の力引き出す総合学習
5_5.gif ■2006西博義

 昨年十二月二十五日、 携帯電話にうれしい知らせが届いた。 それは、 和歌山県広川町立津木中学校が 「第四十九回日本学生科学賞」 で内閣総理大臣賞を受賞したという報告であった。
 津木中学校は、 私の出身校である。 その津木中が 『ゲンジボタルの求愛行動を探る』 と題した総合学習の研究成果を応募。 全国の中学・高校から応募された総数五千八百点の中から、 みごとに最高賞を獲得した。
 その三日前、 東京の日本科学未来館で最終審査がはじまった。 私も審査会場に駆けつけ、 寒風の中、 会場に到着した三人の生徒に、 自信を持ってがんばるように激励しただけに、 喜びもひとしおである。
 成虫したホタルの命は、 約十日と短い。 その間に効率的に交尾し子孫を残すためにホタルは光る。
 津木中の研究は、 ホタルの発光に着目し、 その特徴やパターンなどを探ろうというものである。
 オスは集団で規則正しく光り、 メスは不規則に光る。 その光り方の違いでオスはメスを見分けるという。
 調査が進むにつれ、 ①オスの発光間隔は二・六秒で、 東日本型(約四秒)と西日本型(約二秒)の中間型であること②八時と十一時から二回、 それぞれ一時間程度、 活発に光り求愛すること③一匹のメスが約六十~八百個の卵を生み、 幼虫に成長すると清流に生息するカワニナという貝を食べてホタルになることなど、 多くの事実が解明された。
 自然界にひそむ神秘を解明する作業が科学の手法であるが、 生徒たちは、 ふだんは何気なく見ていたホタルの行動の中に、 多くの法則や合理性を見出し、 ワクワクしたのではないかと思う。
 津木中のホタル研究の歴史は長い。 昭和六十二年の生徒・教職員によるホタル飼育研究会発足以来、 もうすぐ二十年になる。 今回の受賞は、 地道な活動の賜物ともいえる。
 私たちの頃は一学年で五十四人いたが、 現在は全校生徒で二十二人。 過疎化の影響が急速に進む地域である。
 田舎の小さな中学校の行った 「総合学習」 の取り組みが、 大きな学校の調査・研究を凌駕して受賞した意義は、 今の教育のあり方を考える上で、 非常に大きい。
  「総合学習」 は、 それまで詰め込み・画一的といわれた教育を変えることを目的に導入された。
 学校が創意工夫し、 環境、 情報、 福祉・健康など教科をまたがる課題について、 体験的な学習を行い、 知識を結びつけ、 総合的な理解を求めている。
 津木中の取り組みは、 その目的を達するばかりか、 これまでの暗記中心の教育では見られなかった力を生徒から引き出すことに成功している。
 それは生徒たちの活動が地域住民を巻き込んでホタルの保護運動に発展し、 津木のホタルが多くの人の目を楽しませていることを見てもわかる。
 文部科学省は、 詰め込み教育の弊害を指摘されて、 約十年前に 「ゆとり」 教育に転換したが、 現在は、 学力の低下、 特に二極化問題などで、 その方針が揺らいでいる。
 しっかりした基礎的・基本的な学力が必要なことはいうまでもない。 私はその確かな土壌の上に、 多様な個性という花が咲き、 それぞれが、 どんな条件でも生き抜く能力を培うことが教育の目的ではないかと考える。


(2006西博義)
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